田原先生Vol.1:小動物を虐待する子どもの背景と対応

2016.06.28

ネコやウサギ、カモ、ハト、カメなどの小動物に危害を加える、虐待する、殺害するといった事件が報道されることがあります。小動物を虐待・殺害してしまう子どもの背景や問題点、今後の対応法について考えてみましょう。
年少期、虫や小動物に対して、子どもが残虐行為をするのは珍しいことではありません。動物への虐待が重篤ではなく、遊びの延長として比較的短期間で終わるようであれば、大きな問題に発展しないかもしれません。しかし、小動物を長期間、あるいは繰り返し執拗に虐待しているようであれば、子どもの成長に伴って新たな問題に発展する可能があります。その新たな問題とは、フェルトハウスとケラート(1984)によりますと「暴力的犯罪傾向のある成人は、そうではない人と比べて、児童期・青年期に動物虐待をしていた可能性が高い」ということです。言い方をかえますと、小動物を頻繁に虐待していた子どもは、その後、重大な暴力犯罪を起こす可能性が高まるということになります。
年少期の動物虐待が、その後、人への暴力行為に発展するかどうかについて、日本での研究はまだ十分ではありません。しかし、谷敏昭(2007)による千葉八街少年院での調査は示唆に富むものでした。谷は、中学2年生以上の一般中学生125名と、少年院に収容された61名に対して、動物虐待の体験について比較調査をしました。少年院に収容された子どもは、さらに暴力傾向が強いかどうかにより、暴力系犯罪少年と非暴力系犯罪少年に分けて分析しました。その結果、動物虐待をしていた割合は、一般中学生で約40%,非暴力系犯罪少年で約55%、暴力系犯罪少年で約80%と、暴力行為を伴う犯罪少年でとくに高いことが分かっています。谷よる調査では、一般少年にも動物虐待をした経験がある子どもが少なくないことから、動物虐待と暴力犯罪傾向との関連性を考えますと、動物虐待が疑われる子どもには特段の配慮が必要となります。