田原先生Vol.2:小動物を虐待する子どもの背景と対応

2016.07.01

 子どもが動物を虐待する背景には、多様な要因・動機が潜んでいます。
(1)子どもが未成熟で、社会的スキルや認識が不足している:自分が動物に行っている行為の意味やその行為を周囲がどう思っているのかを十分に理解できないまま、動物を虐待している子どもが該当します。このような場合、一般に周囲からの注意や認識の発達にともない、動物への虐待行為は減少していきます。
(2)怒りや不満、不安の動物への転嫁:保護者などからの暴力・ネグレクト、保護者間の不和や保護者のアルコール依存などによる家庭崩壊、友だち等による嫌がらせ、動物からの不快な経験などにより、怒りや不満、不安の「はけ口」「八つ当たり」「復讐」「仕返し」の手段として、より弱い動物虐待をすることがあります。フェルトハウスら(1984)の研究では、保護者の暴力やアルコール中毒などによって家庭が機能不全になっていたと考えられる子どもの割合は、暴力系凶悪犯が約75%、非凶悪犯が約30%、一般市民が10%でした。家庭が機能不に陥ることにより、子どもがより弱い小動物の虐待に向かうとする研究は少なくありません。
 (3)他者が驚く様子を見るのが楽しい:自分の虐待している様子を第三者に見せた(あるいは報道された)ときの反応が「愉快」「面白い」といったことから動物に虐待を繰り返すことがあります。このケースの場合、周囲が驚きを示さなくなると、さらに虐待行為をエスカレートしてしまうことがあります。
 (4) 精神疾患からの派生:とくに背景がないにもかかわらず、平然と動物を痛めつけたり、殺したりしたくなるといった欲求から、動物虐待をする子どもがいます。動物が苦しんでいる姿を見ること自体が楽しいといったサディズム、虐待等の犯罪行為に対して罪悪感がない行為障害(成人になると反社会性パーソナリティ障害)や反抗挑戦性障害などが考えられます。
 まだ研究段階ですが、動物虐待を繰り返す子どもの場合、脳の「眼窩部(がんかぶ)の皮質に損傷がある」「モノアミン酸化酵素A遺伝子に変異が見られ、母親の胎内にいる時点から脳がセロトニンの過剰状態にさらされており、子どもが成長してもセロトニンが精神安定・鎮静効果を発揮していない」などの可能性を指摘し、脳に問題があると考える研究者もいます。