堀田先生:ICT活用授業のABCVol.4:ICT活用は学力向上に効果あるの?

2011.11.28
堀田 龍也

第2回のコラムでは、ICTの整備がICTの活用頻度に大きく影響することを示しました。
また、第3回のコラムでは、実物投影機の活用頻度と、教員の授業中の教授活動に対する意識が関係することを示しました。
ここまでの連載で、ICTの整備がICTの活用頻度に影響し、ICTの活用頻度が教員の教授活動に対する意識に影響する、すなわち「授業がよりよくなる」可能性が高いということになります。

では、ICT活用は、実際に子どもたちの学力向上につながっていると言えるのでしょうか。

このコラムでは、最近のデータを用いて、我が国の現在のICT活用の現状について解説していくことにしています。
最終回の第4回は、このグラフです。

(グラフ)実物投影機の活用頻度×学力調査の平均点

これは、平成22年度に文部科学省が発表したデータです。ICTの整備状況や活用状況等を小学校に対して追加調査し、平成21年度学力調査の結果との関連を見た分析結果です。
このグラフは、教員による実物投影機の活用頻度別に、学力調査の国語A、国語B、算数A、算数Bの平均点を整理したものです。

一見してわかるように、実物投影機の活用頻度が高い方が、学力調査の国語A、国語B、算数A、算数Bの平均点が高いことがわかります。
学力調査は、6年生の年度当初に行われます。そのため、この追加調査では、当該の6年生を5年生の時に担任した先生に対して、実物投影機の活用頻度を尋ねているものです。よって、1年間かけて実物投影機を活用した学習指導を行った結果が、いくらかは学力調査に影響していると考えてよいでしょう。その結果が、平均点の差につながっていると考えられます。

実物投影機では、教員が何かを映して教えるため、学習内容が端的に伝わります。それだけでなく、多くの教室では、児童がノートやワークシートを実物投影機に映しながら、自分の考えたことを説明する学習活動が行われています。
これは、新学習指導要領で言うところの言語活動の充実にあたります。学習内容を自分の言い方で説明し、他者の言い方で聞き直すことが、理解をより深めやすいと考えられます。

新学習指導要領における学習指導を行うためには、普通教室にICT環境が常設されることは不可欠です。なぜなら、ICT環境の常設がICTの活用頻度を高め、ICTの活用頻度が教員の意識に影響し、その結果もたらされた授業の充実が児童生徒の学力向上に反映されていると考えることができるからです。

今日、ICTは、得意な人が自慢気に活用する道具ではありません。特別に準備をして活用する道具でもありません。普通教室に常設し、授業で必要なシーンがあったらいつでも簡単に活用するような、授業インフラです。

ICT活用に対する、これまでのステレオタイプな思い込みを払拭したいものです。