阿久澤先生:特別支援教育のABCVol.3:自分に聞いてごらん!

2011.12.19
阿久澤 栄

<待つことが苦手、すぐ手が出てしまう‥‥etc.!>

「じっと座っていられずガタガタ。立ってしまうことも」「静かにしている時でも奇声をあげる」「自分だけで喋り続ける」「順番を無視、何でも一番がいい」「待つことが苦手」「短気ですぐカッとしちゃう」「すぐ手が出てしまう」‥‥こんな子どもクラスの中にいますよね。ADHD(注意欠陥多動性障害)の中の「多動衝動優先型」というタイプの子どもたちです。担任の先生にすれば、年中叱ってばかりいなければならない子どもたち。でも、叱れば叱るほど自尊心を失くしてしまい、さらに問題行動はエスカレートしてしまいます。本当に困ってしまいます。
この子どもたちの行動は、指導上難しいものばかりですが、本人たちには全く悪気はありません。だから余計困るのです。脳の中で情報がうまく伝わらず自分自身で自分自身をコントロールできにくい状態なのです。それでは、私たちはどのようにセルフコントロールしているのでしょうか。最も簡単に気付くことは、「こんなこと、ここで言ったらまずいかな?」などと頭の中で自分自身に話しかけていることです。(これを内言語と言います。ちなみに、幼児期にはこうした言葉がそのまま口から言葉として出てきてしまいます。幼稚園の年少さんのクラスなどでは独り言を言っている子どもがたくさんいます。)この子どもたちは、この自分自身への語りかけが苦手なのです。
そこで、こうした子どもに「『今、怒って○○くんをぶっていいですか?』って自分に聞いてごらん。聞けるかな?」と、何度も何度も言い続けました。上手にコントロールできた時には、「もう一人の君がなんて言ってた?」と尋ねます。たいがい「だめって言ってた!」と答えてくれます。そんな時はいっぱい褒めてあげます。2か月ほどしたら、はじめに書いたような行動が減っているのに気付きました。
こうした子どもたちへの指導は色々あると思いますが、何とかセルフコントロールができるような方向を目指し、少しでもその方向に向かっているようなら、徹底的にほめること、それが秘訣なのだと考えています。指導する側に根気が要る仕事ですが、試してみる価値はあると思います。