西村先生:生徒指導のABCVol.2:児童生徒指導力を高める

2012.01.23
西村 哲雄

平成22(2010)年3月に文部科学省から生徒指導を進める上での基本書として「生徒指導提要」が示されました。基本書としては昭和56(1981)年10月の「生徒指導の手引」(文部省)以来となります。
平成18(2006)年12月に、約60年ぶりに教育基本法が改正され、これからの教育のあるべき姿、目指すべき理念が示されました。さらに、学校教育法などの」教育三法が改正されました。これらのことを受けて、また、社会の急激な変化、進展に伴って様々な生徒指導上の諸課題に対応する必要も生じてきました。
また、平成21(2009)年6月の「生徒指導提要の作成に関する協力者会議の設置について」の1目的の中で、「生徒指導は、児童生徒に自主的に判断、行動し積極的に自己を生かしていくことを促し、社会的な資質や能力、態度を修得させるなど、子どもの人格の形成を図る上で、学習指導とともに学校教育にける重要な役割を担っている。しかし、ともすれば学校における生徒指導が、いじめや暴力行為、不登校等、児童生徒の問題行動等に対する散発的・局所的な活動に終始する傾向が見られるなど、学校教育としての組織的・体系的な取組が十分でないことが指摘されている。また、近年では、特に、基本的な生活習慣が身に付かないまま小学校に就学する児童が増えているなど、小学校段階から学校全体で組織的に生徒指導を行うことが求められている。」とあります。「生徒指導提要」の特徴は、小学校段階からの生徒指導を充実したことやインターネットや携帯電話などを使った問題行動、児童虐待、子どもの自殺など今日的な課題を取り上げていることなどにあります。ぜひ読んで欲しいと思います。
さて、生徒指導は、当然のことながら温かい人間関係に根差した、信頼関係のある学級経営がベースになります。教師は、誰もがカウンセリングマインドをもちつつ、教科指導と生徒指導の両輪を上手に回転させながら教育活動にあたる必要があります。そのためには、児童生徒一人ひとりの性格、学習状況、家庭環境、部活動、友達関係、悩みなど様々な事柄を把握し、受容し、理解していくことが大切です。そうは言っても、私の経験では、“言うは易く行うは難し”そう簡単に生徒指導が上手く機能するものではありません。その教師そのもの、人間性そのものを児童生徒が受け入れるかどうかにかかっているわけですが、かと言って迎合していては指導になりません。社会で許されない行為は学校でも許されないわけですから、児童生徒のあるがままを受容しつつ、児童生徒に粘り強くアプローチすることが求められています。教師自らが、自分の強みと弱みを分析し、常に自己研鑽に励むことが肝要です。