作間先生:謎解き読みのABCVol.4:謎解き読みは時間をかけて......。

2012.02.06
作間 慎一

『お手紙』の謎を考えてみましょう。かえるは急いで手紙を書いて家を飛び出したのに、どうしてかたつむりに頼んだのかというと、かえるは、手紙を配達して欲しかったのです。なぜなら、手紙は直接渡すのではなく、配達されるものだからです。それと、手紙より先に行って昼寝しているがまを起こして、手紙が届くのを待たせたかったのです。かえるはかたつむりがほどなく手紙を届けると思っています。しかし、かたつむりは来ません。それで、手紙を書いたこと、何と書いたのか聞かれてすぐに教えてしまいます。「親愛なるがまがえるくん/ぼくは君がぼくの親友であることをうれしく思っています。/君の親友かえる」です。でも、かえるとがまはもとから親友です。親友でうれしいと言われて喜ぶかというと、がまは「いい手紙だ」というのです。確かに手紙としては悪くありません。そして、中身がわかっているのに、4日も幸せな気持ちで手紙を待って、がまは手紙を受け取りとても喜びます。がまは「手紙」が欲しかったのです。

謎について考えながら読んでいくと、『お手紙』は手紙のことを書いているような気がしませんか。中身がわかった手紙を待つのは、親友のかえるからの手紙だから、初めての手紙だからかもしれません。しかし、中身のわかった手紙を待ったりしませんか。手紙は中身が大事であることはとうぜんですが、中身がなくても、あるいは、中身がわかった手紙でももらうのはうれしいということに思い当たりました。ところで、幼児は「お手紙ごっこ」が大好きです。中に何も書いてない手紙をやりとりしたり、手紙をあげることを電話で予告したりもするそうです。何か似ています。

『お手紙』には、手紙についての話が隠れていました。もちろんそれが正しい答えだということではありません。しかし、作品の中の謎が気になって、謎解き読みをしてみると、隠れていたことが見えてきました。気になった謎を考えるということは、作品について何度も読みながらずっと考えることです。それには時間がかかりますが、今まで思ってもいなかったことが心の中に浮かぶかもしれないのです。

現在の国語の授業では、謎解き読みを実践するのはいろいろと難しいかもしれません。しかし、子どもたちが作品の中に変だとかおかしいとか言うことがあったら、それが気になることだったら、考えてみることが大事だとアドバイスできるのではないでしょうか。そして、先生にも一緒に考えて欲しいと思うのです。