山口先生:授業デザインのABCVol.2:授業の仮説

2012.05.14
山口 栄一

授業のデザインでは、授業をひとつの仮説と考えます。それは、「Xという特性をもつ学習者に、Yという方法で教えることによって、Zという学習が成立する」という形で表せます。例をあげれば、「たし算を習得している学習者に、あるプログラムをつかって教えると、かけ算を習得できる」ということです。ここでの目標は「かけ算ができること」であり、検証されるのは、そのプログラムです。プログラムの良し悪しです。もし学習者の結果がよくなければ、それはプログラムがわるいのであり、プログラムは改善されなければならない、ということを意味します。
一斉授業をイメージしている教師にとっては、これが何を言っているのかを理解することは必ずしも容易ではありません。彼らの前にいるのは、かけ算を教えるのに適した子どもたちがいるわけではない、つまり、すでにかけ算を学んでしまっている子どもや、かけ算を学ぶだけの準備のない子どもたちも参加しているからです。子どもの立場から言えば、準備のない子どもからはムリであり、習得済みの子どもにとってはムダな時間です。また、デザインの立場から言えば、彼らをプログラムの効果の検証に用いることは適切ではない、ということです。
したがって、一斉授業が有効であるためには、複数のプログラムを動かすことが必要なのですが、それを理解するためには、授業とは何のためにあるのかを確認する作業が必要です。