山口先生:授業デザインのABCVol.3:方法重視の教授モデルと目標重視の教授モデル

2012.05.21
山口 栄一

最近では、PDCAサイクルという言葉を耳にするようになりました。これは、システム化という発想から来ているもので、授業のデザインもこれにもとづいています。
目標重視のモデルとは、「教えたかどうかは、学習者が学んだかどうかによって検証されるべきだ」という考え方です。このモデルからすれば、教師がどんなにがんばったとしても、子どもたちが学ばなければ、教えたことにはならない、ということになります。この立場以外のものは、方法重視のモデルといってよいでしょう。例えば、学生たちに、「授業中に、黒板は消してはいけないのですか」と問われることがあります。彼らは「授業が終わったとき、黒板には、授業が表現されるべきだ」と教えられたと言うのです。これこそ方法重視のモデルの最たるものです。
方法重視というのは、特に新任の教師に典型的にみられるものです。なぜなら、彼らにとっては、子どもたちに何を学ばせればよいか」という問いよりも、多くの子どものまえで「私はいかにふるまうか」、「ここで何をしたらよいのか」に汲々としているからです。時間をこなすことが優先され、子どもの学びがおろそかになる、というわけです。指導案でも、教師の活動が書かれるものの、何が学ばれ、また、どのような知識を前提としているのかはまったく書かれることはありません。
そのためには、評価とフィードバックがポイントなのですが、それがむずかしい。しかし、評価のために授業があるわけではなく、これを理解することもやさしくはない。授業のデザインは簡単ではありません。