井出先生:ことばの教育のABCVol.2:ことばに響き合う学級つくり

2012.05.14
井出 一雄

各学校では、毎月、生活指導の目標を掲げて徹底を図っています。その月別の生活指導目標のうち、どの学校も、必ず挨拶やことば遣いに関する目標を取り上げています。例えば、「あいさつをしっかりしましょう」「正しいことばつかいをしましょう」などです。ところが、この掲げた目標について各学級で多少指導しますが、日々の生活の中で意図的・計画的に徹底を図る取り組みをしているところは少ないといえます。
ことばに関する目標は、学級活動や国語、道徳の時間などで具体的な事例として取り上げるように指導計画を作成し徹底を図るようにします。より積極的にことばに関して感性を磨く言語活動環境つくりに努めていくことが大切です。

美しいことば、感動することばと言語活動環境つくり

子どもたちが登校する朝、最初に目にする所はどこでしょうか。校門を通った玄関脇であったり靴箱の壁面であったりします。その最初に目にする所に、四季折々の「子どもの詩」「子どもの歌」が掲示されているのを見ますと心が和みます。美しいことば、すばらしいなと思うような感動することばに出会うと人の心は洗われるのです。校門の近辺に限らず、各階の廊下や階段の踊り場の壁面に、ことばのコーナーを設けることもよいでしょう。
学級内においても、壁面に、年中行事や歳時記に関する解説、ことわざや慣用句、美しい詩や歌などをイラストや絵入りで紹介するような環境構成を整備しましょう。
ことばから瑞々しい感性を磨くことは、他への思いやりや他者の気持ちが分かるようになるなど、豊かな心を育むこと繋がってきます。

社会性を育む言語環境つくり

最近の新聞に次のような内容の記事が載りました。最近の若者は相手の靴を踏んでも誤りの一言もない、まして、困っている人(見知らぬ人)に出会っても声をかけることもしないという内容でした。この事例から、二つのことが考えられます。 一つは、社会生活を営むためのことばによる規範意識の欠如です。かつて、江戸では「傘かしげ」(路上で行きかう際にぶつからないように傘を傾ける)「こぶし腰浮かせ」(船着場で新たな客が乗ってきたら自分のこぶし分腰を浮かせて席を空ける)「肩ひき」などに見られることばが江戸庶民の中に根付いていました。つまり、社会的なマナーとことばが合致した「江戸しぐさ」が定着していたのです。学級の中でも、子ども同士や教師と子どもとの人間関係を深めるときには社会的なマナーとことばが大切です。人に何かしてもらったときに「ありがとう」「すみません」、言われたほうは「いいえ、どういたしまして」、何か気が付いたときに「○○が落ちていますよ」などの心遣いやことば遣いを自然に表すようにしたいものです。 二つは、人間関係を深めるためのことばかけをする勇気がもてないということです。困っている人に出会ったり寂しげな人を見つけたりしたときに、必ずことばをかけるようにしたいものです。勇気をもって発せられた一言は、どんなにか相手の気持ちを安定させ元気付けるか計りません。相手の心を気遣うことばかけを徹底するようにしましょう。