小松先生:学校論のABCVol.3:「新しい公共」型学校づくり

2012.06.18
小松 郁夫

私は昨年の秋、「学校管理職の経営課題」というシリーズの第2巻として、『「新しい公共」型学校づくり』(ぎょうせい)という本を出版した。その中で「新しい公共」という社会論を背景とした公立学校の管理運営、学校経営の在り方を考察している。
「新しい公共」とは、政権交代後に、鳩山内閣や菅内閣で国家戦略として提起された考え方といってもよい。いや、政権交代とは関係がなく、「新しい公共」とはnew public management (新公共経営論)という政治・行政論として、1980年代以降に世界の先進諸国すべてを巻き込んだ社会改革論だ。鳩山内閣当時の円卓会議では、友人の金子郁容(慶應義塾大学教授)さんが座長を務めていたので、とりわけその議論の行く末に関心を持っていた。また、金子さん(私たちの間では、お互いを先生ではなく、さん付けで呼ぶようにしている)などと一緒に、文部科学省の「熟議」に関する会議でも新しい学校の在り方について議論した。
私は教育政策の研究者として、70年代の後半から、保護者や地域住民の学校への参加や参画、支援を構想し、閉ざされた学校づくりの改革の研究をしてきた。具体的には指導主事の在り方、教育行政の「指導助言」行政としての本来の機能、イギリスの学校理事会に見られる新しい公立学校のガバナンス、学校評価などを幅広く、しかしそれぞれを関連させながら調査や研究をしてきた。
さらには東日本大震災の調査などを経験して、自助・共助・公助という人々のつながりや関わりについて、教育での在り方などを考えている。学習とは、本来は自学自習が基本であり、その上で思考力や判断力、表現力などを高めるために、ともに学び合うという相互関係での学習が重要になるものだ。税金で雇われた教員から専門的に教育を受けるのは、より質の高い学びを求めるからであり、社会的機関である学校で学ぶのは、一定の社会的資格や学んだことに対する社会的承認(学歴など)を得たいという側面があるからだ。
本の中では、新しいタイプの学校として「地域運営学校」について考察や紹介をした。これからの学校がどのような管理運営システムの中で学校づくりを進めるのかなどを授業で一緒に考えてみたい。