小松先生:学校論のABCVol.4:学校は「教育施設」であり「公の施設」

2012.06.25
小松 郁夫

東日本大震災で未曾有の被害を受けた被災地をあちこち調査に回った。被災地支援など、私のような人間には、年齢や能力、資源など、きわめて限りがあり、ほとんど何の力にもなり得ていない。それでも、何かできることがないかと考えて、仲間と原発の事故による被災者、避難者の調査などを行い、できるだけきめ細かく持続的に関わろうとして「3・11被災者支援研究会」を立ち上げ、名ばかりながらも発起人代表をしている。
また、この6月の大会までは副会長を務めている日本教育経営学会の有志に呼びかけ、「震災時の学校対応に関する調査研究」をスタートさせ、昨年度文部科学省から約5百万円の調査委託研究費をいただき、報告書をこの3月末にまとめた。具体的な内容は学会のHPや文部科学省のHPにも掲載されている。
この調査を通じて感じたことに、学校は「教育施設」であるが、しばしば「公の施設」として、保護者や地域住民にとって、重要な地域の公共施設であるという点だ。災害時には、最も頼りとなる避難場所であり、普段でも人々が出会い、協力しあって、子供の健全育成に取り組み、自らの生涯学習の重要な施設としても利用している。
阪神淡路の震災時にも、語り草のように受け継がれていることだが、非常時に教職員が住民に示した大活躍は、苦難に見舞われた人々をどれだけ力づけて救ったのかわからない。東日本大震災では、そうした歴史的教訓をも生かして、さらに被害が拡大するのを防ぎ、学校関係者は多くの児童生徒、地域住民を救助することができたといわれています。
学校は施設だけでなく、教職員、さらにはよく指導された児童生徒の存在は、地域の宝である。教職をめざし、さらには教育界で指導的立場になる教職大学院の修了生たちが、ますます社会から尊敬され、重要な使命を果たせるよう、私も定年までの最後の1年も全力で教育活動に取り組んでいきたいと考えている。