古川先生Vol.3:生活科は どのように誕生したの?

2015.06.12

ここ数年の中で教員として採用された先生方は、生活科を経験してきた方が大半です。「生活科でどんなことが心に残っていますか」と聞くと、「学校探険しました」「アサガオを育てました」「おもちゃづくりをしました」「けん玉やおはじきなど昔遊びをしました」「地域の探険にもいったよね」など、いろいろな活動や体験したことをいっぱい大学院の院生の皆さんは答えてくれます。中には、「それまでは、低学年にも社会や理科があったんですってね?!」ということを指摘する院生もいます。

平成元年に改訂された学習指導要領で、「生活科」が戦後初めて新教科として小学校に誕生しました。もちろん、そのずっと前から「低学年の教科編成はこれでいいか」「低学年の実態に即した教科が必要ではないか」という論議がなされてきました。

もっと、低学年の子どもたちには「活動や体験を伴って学ぶ教科が…」「幼稚園や保育園での学習と段差のない学習が…」「自立への基礎を培う学習を設定することが大切」などの考えから、生活科が創られました。2020年の改訂に向け、また新たに設定されると思われる「道徳」や「小学校英語」の誕生と少し経緯が違っていました。

「これまで低学年で取り組まれてきた社会や理科のどこが悪いのか」「社会や理科を低学年でなくしていいのか」「科学教育の低下につながる」などの意見や批判もありました。また、「第二道徳」「しつけ科」ではないかなどという声もありました。今では、すっかり低学年では当たり前の教科になりましたが、新しいものが入ったり、変更されることに対してはなかなか理解されたり受け入れられることに時間がかかるものです。

さらに、「生活科」の設置には次のようなこともねらいとして考えられていました。

(1) 学校教育においての体験や活動の重視
教室で、先生が黒板を背にして教科書とノートで教える学習形態の見直しです。学習は、子どもたちが頭だけで学ぶのではなく、体全体で活動や体験を通して学ぶことが大切ですという指摘です。

(2) 一人ひとりの個を生かす教育へ
先生が示した課題に対して、子どもたちはいろいろな疑問や問題をもちます。もちろん、その解決方法や考え方だって違います。しかし、とかく教えていく立場に立つと、先生は一つの問題にまとめて学習を進めていく傾向に陥ります。もっと一人ひとりの問題を大切にして、個々にあった解決方法を認めていく教育を進めていくべきだという教育を大切にするということです。

(3) 学校と家庭・地域とのかかわりを大切にする
学校は地域の中にあります。もっと地域に目を向け、地域から課題や問題を見つけて学習を進めてはどうかということです。子どもたちは、地域や家庭から通ってきます。もっと地域や家庭との絆を強くし、地域から教材を見つけ、地域の方に先生になって教えてもらってもいいのではないかという取り組みです。

さあ、あなたはこれからの教育活動をどのように捉え、進めていきますか。