佐藤先生Vol.2:研究生活と教員生活を振り返って 第2回

2015.10.22

大学4年生の時の教育実習のことは、今でもはっきりと覚えています。母校の東京都立戸山高校で行いました。よくできる生意気な男子生徒も多かったので、いろいろと授業中に質問をしてきます。自信を持って答えていたのですが、一つどうしても分からない質問が出ました。「ごめんなさい。今答えられないので明日までに調べてくるから。」というような事を伝え、その夜はあらゆる文法書を調べ、翌日の授業で開口一番に質問に答えました。「先生、ずいぶん調べてきたんだね。よくわかったよ。」その一言が嬉しくて、今でもその光景が目に浮かびます。それ以来、分からないことがあれば素直に認め、十分に調べて翌日答えれば良いと、学生さんにも指導しています。楽しい教育実習でした。
学部生の時には、既に数件の家庭教師を経験しました。教育実習も終わり、益々、「教えるのが好きだ。楽しい!」と思うようになりました。しかし、生成文法をさらに勉強したいと思い、大学院に進みました。
大学院の修士課程では、どの形容詞、動詞がforあるいはthatを取るか、というテーマで修士論文を書きました。例えば、importantという形容詞は、(1)It’s important for the meeting to start on time. (2)It’s important that the meeting should start on time. のように、forもthatも取れますが、forあるいはthatしか取れない形容詞や動詞があります。これを分析しました。例文をたくさん集め分類していく作業が楽しく、さらに博士課程に進学しました。
大学院時代は、毎年夏はアメリカやイギリスの大学院で授業を受けました。アメリカの大学院では講義形式は少なく、ほとんどが学生と教員のディスカッションで成り立ちます。教員が質問を出し、院生たちが次々答えていくのですが、英語のスピードが速くなかなか発言できません。やっと発言しても、ゆっくりと話していると、「何を言っているのかよくわからない」と教授に言われ、次の人がまた話し出します。英語力と力のなさに、挫折感を味わいました。挫折は次のステップのばねになると、後から気づきました。