近藤先生:学校の危機管理Vol.2:教室内で盗難が起きた!子どもの立場で親身に対応を

2015.11.13

今回は、前回挙げた危機管理の要諦

①情報収集と事実把握
③目標設定と戦略
⑤逃げない姿勢と行動

②迅速な組織行動
④判断力と公正性
⑤キーパーソンの存在

 

を視点に、軽微と思われやすい「校内盗難」から考察していきましょう。
校内で盗難が発生した場合、「校則で禁止している金銭を持ってきた子どもの自己責任だ」として、集団に注意を促して対応を終えたり、「学校は“犯人捜し”はできない」として通り一遍の指導で終えたりすることは、危機管理上も適切な対応とはいえません。こうした対応では、当該者は学校に強い不信感をもち、二度と相談に来ることはないと考えるべきです。さらに、子どもたちの間に「学校は何もしてくれない」という不信感が広がってしまい、一層情報や事実の把握が困難になります。解決に導くことは「犯人捜し」ではなく、加害行為に及んだ子どもの育成上の課題を発見することであり、その意味でも学校は積極的に取り組む責務があります。また、盗難の背景にいじめなどの重大な問題が潜んでいる場合もあり、その見逃しにつながったり、同種の盗難が多発したりする危機を含んでいるのです。
教師から見て些細な問題に見える事柄でも、子どもの立場に立って教師は親身に解決に努める必要があります。危機管理が全ての教師の仕事だと述べたのはこのことであり、また、このような教師の行動が信頼を生み、教師を危機管理上欠かせない「キーパーソン」たらしめるのです。
一方では、現金の盗難に際して保護者から強圧的に弁済を求められ、校長が個人的に弁済したところ、ブランド物の財布の代金や購入時の交通費まで高額の費用を求められた事案も発生しています。組織を生かし迅速に情報収集して事実を確定し、公明正大に警察に相談するなど、公正な判断と「事なかれ」に陥らない毅然とした対応が求められます。個人的に弁済するなど、あってはならないことであり、当の保護者にも状況に応じた相応の責任は発生していると見るのが一般的です。冷徹な事実把握によって状況を判断し、市民目線の公正さを堅持しながら、警察や教育委員会など第三者との連携も積極的に進めて解決を図る必要があります。