近藤先生:学校の危機管理Vol.3:鬼ごっこで生徒がけがをした!事後対応に潜む危機

2015.11.20

コラム3回目は危機管理の要諦6項目を視点に、子どものけがについて考察します。
中学2年の学年主任が、午後6時頃、校長に次のように報告をしました。
「先ほど、退勤間際の養護教諭から聞いたのですが、帰りの学活後、2年男子A男やB男たちが教室でふざけて鬼ごっこをしていたそうです。B男が逃げる際に教室のドアを閉めたところ、追ってきていたA男が右手の中指を挟んでしまい、保健室に来たそうです。養護教諭は打撲と見て湿布をし、『様子を見ましょう』といって帰したとのことでした。」養護教諭はすでに退勤し、担任は午前中で早退していました。
さて、ここではどのような問題点を指摘できるでしょうか。養護教諭の報告の遅さや、言い置いて退勤する姿勢以外にも多数の問題が内在しています。以下、具体的に解説していきます。
第一に指摘できるのは事実把握の杜撰さです。本当に“ふざけて鬼ごっこ”だったのでしょうか。この場合の事実把握は保健室での聞き取りだけでは不十分で、日常の人間関係や最近の出来事も掌握している担任や学年と組織的に連携して総合的に判断する必要があるはずです。また、けが発生前後の子どもの会話や感情の流れ、立ち位置や動線などを確かめ、発生状況を冷静かつ公正に確定する必要があります。“ふざけ”と見せた「いじめ」の場合もあり、事実の把握には組織行動と冷徹さが求められます。
第二に、養護教諭がけがをした生徒にいった“様子を見ましょう”とは、誰が様子を見るべきかを質したいところです。“打撲と見て湿布”は養護教諭の専門判断といえますが、あくまでも医療判断の下位に位置するものです。“様子を見る”という対応には、逃げの姿勢が混じることがあります。“様子”を誰が見るのかを明確にした上で、“様子”によっては医療につなげる「判断の猶予期間」をもらう言葉であるはずです。指先のけがでも手術と三カ月以上の加療を要した事例も存在するのです。
三つ目は、教室のドアの構造に問題はなかったかなど、安全配慮が問われる状況といえます。日頃から組織的な施設・設備上の安全点検と設備改修の実施が求められる問題でもあります。