近藤先生:学校の危機管理Vol.5:暴力行為発生への対応 暴力の否定は自立の一歩

2015.12.10

今回は、このコラムで示してきている危機管理の要諦6項目を視点に、暴力行為について考察します。
暴力を否定し、責任を自覚させる指導の必要性は周知のことと思われます。なおざりな対応は、集団の不安を高め、他の問題行動を誘発するとともに、当該の子どもの成長を歪めてしまうことになります。また、暴力への曖昧な対応が学校の“荒れ”や深刻ないじめにつながるなど、新たな危機を生むことを肝に銘じておきたいものです。
さて、横浜市の過去の調査によれば、器物損壊に弁済を求めるなど、社会的責任を明確にする毅然とした対応が小学校において少ない傾向がみられました。これは、子どもが幼いことから弁済までの責任を求めず、また、教師が管理責任を意識し過ぎたり、保護者とのトラブルを避けようとしたりすることが背景にあると考えられます。“事なかれ主義”の判断が公正さを失わせている傾向ととらえることもできます。平成16年以降、横浜市ではこの問題の改善を図り、器物損壊に伴う費用弁済を指導プログラムに組み込み、保護者が直接自治体に納付するシステムを構築して実施してきています。その結果、同市の器物損壊をはじめとする暴力行為は、その他の施策とも相まって大幅な減少傾向を示しています。このように、自らの行った行為について子どもに社会的責任を自覚させる指導や対応は、家庭と学校が密接に連携して行うべき責務であり、積極的に進める必要があります。
次に対教師暴力ついて述べます。この暴力は教師の教育への意欲と自信をくじくものであり、学校の教育活動そのものを破壊する行為であることを明記しておきます。これを曖昧な対応で終わらせてしまうことは、子ども集団の不安を余計に膨らませ、学校の機能不全という危機を招くことにつながります。事後の指導によって、当該の子どもと保護者による謝罪や治療費の弁済などをさせるのが通例の事後経過といえますが、それだけでは十分とはいえません。学校と警察の連絡制度などを活用し、警察等関係機関からの当該の子どもへの説諭や相談、場合によっては状況に応じた被害届の提出など、毅然とした対応が求められるところです。
「暴力否定」という自立に欠かせぬ課題克服を確実に達成させるには、学校・家庭はもとより社会資源を積極的に活用することが肝要です。暴力の背景には多様な要因があり、日頃から児童相談所・警察・相談機関・SSW・医療・教委等と協働するケースカンファレンスなどのシステムを構築しておく必要があります。日頃からのこうした取組が多様化する学校の危機への備えとなっていくのです。