谷先生Vol.6:小学校で使う市販テストのちょっと"?"な問題(2)

2015.12.22

国語の教科書教材「わらぐつの中の神様」について問う「市販テスト」の問題の続きです。こんな問題も出題されていました。

2 「たやすくできる」を、分かりやすい言葉に言いかえましょう。

この問題も答えを特定できません。

①簡単にできる。

おそらくこれが模範解答なのでしょう。しかし、次のような解もあり得ます。

②すぐにできる。
③容易にできる。
④誰でもできる。

私のクラスなら、子ども達はもっと悪のりします。
「猿でもできる」
「スイスイできる」
「弟でもできる」
「楽勝でできる」
授業の中で、教師と子どもとがやり取りしていく場面では、こうした問いも有効です。子ども達は様々に思考します。いずれも「すばらしい」とほめ、意味付けをしてやればいいのです。
しかし、テストでは、そうはいきません。先ほどのそれぞれの答えを○にするのか、それとも×にするのか、あるいは△なのか・・・。子どもも保護者も納得するようなロジックが見当たらないのです。

さらに、次のような問題もあります。

5 「元気よく町へ出て行きました」から、おみつさんのどんな気持ちが分かりますか。

このタイプの問題は、かなり多くの市販テストで出題されています。結論から言えば、厳密には次のように答えざるを得ません。

気持ちは分からない。

引用されている文章の中では、おみつさんの気持ちはどこにも書かれていないからです。もちろん、解釈としては、妥当性の高い答え方はあり得ます。しかし、採点基準が難しく、結局、ほとんどの答えを◯か△にするしかありません。そして、前回書いたように、△という採点は子ども達をがっかりさせ、学力もつきません。
同じ気持ちを問うなら、次のような問い方のほうが少しはいいでしょう。

5 「元気よく町へ出て行きました」という表現から、おみつさんはどんな気持ちだったとあなたは考えますか。

授業では、このような問いで考えさせているはずだと思います。
また、「文章中のどの言葉からそう考えましたか。」のように聞けば、様々な解釈が出るでしょう。教師がうまく展開すればいい授業になるかも知れません。
ところが、テストでは、このタイプの問題は採点ができなくなります。個人の解釈ですから、「何を書いても良い」ことになるからです。
こうした問題を「気持ち問題」とか「人柄問題」と呼びます。「気持ち問題」「人柄問題」は、答えを特定しにくい典型的な問題の一つです。国語のテストでは「答えが一つに特定できない」場合に混乱が生じることがあるのですね。

次の3点は国語のテストでは一般に「基本中の基本」と言われています。

①問いに正対する。
②正確に書き抜く。
③「字数」を特定する。

何を書いても良いのでは評価できません。結果として勉強が苦手な子どもが答えられず、学力もつきません。プロフェッショナルな教材開発では、こういった思いつきレベルの問題作成はありません。