夏期集中講義「脳科学と教育」第3日目

2011.08.18

午前中は、脳科学研究所の高橋英之先生の話を伺いました。
まず、研究機関で研究されていることを教育にどういかしていくか、ということが重要なミッションであるという話を伺いました。高橋先生は、人間の持つ優れたコミュニケーションの背後にどのような神経基盤が存在しているか、ということについて研究をされています。
あるゲームをしている被験者が、コンピュータと相対しているか、もしくは人と相対しているかで、脳活動にどのような影響を与えているか、ということについて学びました。相手を人間だと思い込むことで、活動が高まる脳の部位は、前頭前野や側頭頭頂接合部です。ここは、心に関わる部位になります。「他者の心は、リスクを媒介に行動を調整するトリガーになる」という言い方をなさっていました。
このあと、実際にロボットを見せていただき、ロボットのパペロくんと会話をしました。「ありがとう」と声をかけると、「いえいえ、どういたしまして。」と愛らしくジェスチャーをして応えてくれます。ダンスをしたり、早口言葉を言ったりして、とても愛らしいロボットです。まるで、ドラえもんと会話をしているようでした。
また、イギリスで行われているロボットを使った自閉症のセラピーを映像で見ました。ロボットを介して、他の子とのコミュニケーションにも効果が表れている様子を見ることができました。ロボットは、研究者の手作りのヒト型で、あえて表情を複雑にしないのだそうです。自閉症の子には、表情を簡単にすることで、情報量を制限することを知りました。ロボットの研究も進んでいる日本でも、ぜひ取り入れるべきだという意見が学生から出されました。
私は、動物を使ったセラピーとロボットを使ったセラピーとの違いについて疑問をもちました。高橋先生のお話では、ロボットを使う最大のメリットは、被験者に合わせて操作することができるということだそうです。

このあと、赤ちゃんラボを訪問しました。
ここでは、赤ちゃんが、どのように言語感覚やコミュニケーションを身に付けていくかということがわかる施設です。特に興味をひいたのは、視認計測装置です。黒いパソコン画面があり、赤ちゃんが実際に見たところが、削れていく装置です。削れた部分は白く変わっていきます。この装置で、1歳児の段階で、すでに意識して画面を削っているということがわかりました。現職院生の青木さんが実際に挑戦してみました。

午後からは、再び大森先生による講義です。他者理解の行動評価と計算モデル化について話を伺いました。
心の理論とは、「他人は自分と同じ心を持っている」ということを理解することであり、幼児の語彙発達段階にもルールを獲得していて、同時に学習戦略を獲得し、適用を制御しているということを学びました。そして、我々の日常の中の規則性として、5つのポイントがあるという話がありました。

  1. 世の中は規則性に満ちている。
  2. 我々はその規則性を利用して生きている。
  3. 人間の心もまた規則的であるが、その規則性は複雑である。
  4. 他者理解は他者の規則性を利用する。
  5. コミュニケーションは他者理解に依存する。

他にも、「男女における脳の働きの違い」や「恋愛はどうして3年続かないのか」など、脳科学の立場から解説していただき、「へえー。」と何度も声があがりました。
毎日学ぶこと、新しく知ることがたくさんあり、喜びを感じています。あと2日しかないかと思うと、時間が惜しいです。

(現職院生・T.G.)