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学校劇

2016.07.29

総合芸術としての「学校劇」の誕生

日本の「学校劇」の名付けの親、育ての親は、玉川学園の創立者小原國芳である。
『教育一路』(小原國芳著/玉川大学出版部発行)には、「学校劇」について、次のような記述がある。「学芸会は方々にありましたが、私の主張は、国語、文学、歴史、唱歌、舞踊、体操、図工などを一つに統合した総合芸術としての学校劇を考え、真善美と創造力を養う重要な教科にしようというもの。この呼びかけは、大正末から昭和の前期にかけて、燎原の火のように全国に広まることになりました。私が『学校劇論』なる一書を刊行したのは、大正十年ごろ。日本新劇の育ての親、小山内薫さんは、旅行中に拙著を読み、喜びのはがきを下さったことがありました。」

『王子と乞食』 日本青年館ホール
(昭和32年2月9日~10日)
戦後の岡田陽を中心とする学校劇は着実な成果をあげ、『王子と乞食』の発表は大きな反響をよび、3月30日東横ホールにて再演。
『玉川学園50年史(写真編)』より

学校劇と名付けられたのは、小原國芳が広島高等師範学校付属小学校の理事をしていた時のこと。そこでの年2回の学芸会を学校劇と名付けた。学校劇と名付けた理由については、『教育とわが生涯 小原國芳』(南日本新聞社/玉川大学出版部発行)に次のように記載されている。「①劇は総合芸術であるが、総合されるところに、それぞれの芸術と違った第三の新しいものが生まれる。②子供の生活の充実、真の人格を作るため。子供の生活は劇的生活が多い。それを充実させることは、やがてほんとうの人間になるための前提である。③劇的本能の啓発。劇は子供に内存する普遍的な本能である。しかも子供は真剣だ。(略)④だから子供の劇は、劇の革新運動を意味している。ほんものの劇を生み出すためにそれは必要である。⑤子供に批評眼を養成し、正しい理解をなさしめ、劇を尊敬せしめるために必要。⑥本来の目的ではないが、副産物として、修身や読み方、歴史や語学などの練習に非常な力となる。⑦学校生活の革新のため。(略)⑧家庭改良、社会改良となる。」

『天の岩戸』(大正7年)
『水師営の会見』(大正7年)

広島高等師範学校付属小学校の学芸会では、学校劇として『天の岩戸』『桃太郎』『水師営の会見』などが上演された。やがて、学校劇の名は、年2回の学芸会や全国初等教育大会においての発表、教育機関誌『学校教育』誌上での紹介などにより全国に広まった。全国に広まっていったが、当時の文部大臣は学校劇を認めなかった。しかし、皇太子時代の天皇陛下のご訪問のお礼に来日したイギリスのウェルズ殿下が、新聞社の雑誌に掲載されていた学校劇の紹介記事をご覧になり「日本の初等教育は進歩している。ぜひこの写真がほしい。」とおっしゃったこともあり、学校劇は見直されていった。

やがて学校劇の名付けの親である小原國芳のもとから二人の劇作家が誕生した。一人は児童劇作家で画家の斎田喬、もう一人は児童演劇の研究者である岡田陽。斎田喬は、大正9年に小原國芳の招きで成城小学校の教師となり、学校劇運動を指導。昭和23年に児童劇作家協会(のちの日本児童演劇協会)を設立し、委員長となる。昭和30年には、『斎田喬児童劇選集』で芸能選奨文部大臣賞を受賞した。岡田陽は、映画『明日への遺言』でも描かれている岡田資陸軍中将の長男として生まれ、小原國芳の娘(純子)と結婚。そして、玉川学園で学校劇を推進し着実な成果をあげていった。その後、玉川大学の教授に就任。また、平成16年に日本児童演劇協会賞を受賞した。

『ピノキオ』(昭和23年6月)
『ピーターパン』(昭和23年10月)

のちに日本児童文化協会が主催する学校劇コンクールが開催され、優秀な作品には文部大臣賞が授与された。小原國芳が開学した玉川学園の小学部も、昭和23年に『新しい友達』という学校劇で文部大臣賞を受賞した。

『新しい友達』(昭和23年3月14日)
ザビエル来朝400年記念劇(昭和24年6月10日~11日)
『貝の火』(昭和29年)
『鉛の兵隊』(昭和29年)
『ピーターパン』
(昭和30年1月29日、30日)

『青い鳥』(昭和34年2月14日・15日/創立30周年記念演劇祭にて上演/日本青年館ホール)

参考文献
小原國芳著『教育一路』(玉川大学出版部 1980)
小原國芳著『小原國芳自伝(2)』(玉川大学出版部 1967)
岡田陽、岡田純子編『演劇と舞踊―玉川教育―』(玉川大学出版部 1965)
南日本新聞社編『教育とわが生涯 小原國芳』(玉川大学出版部 1977)
玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』(玉川学園 1980)
玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園50年史(写真編)』(玉川学園 1980)

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