学外施設① カナダ ナナイモ校地

2017.02.10

森と湖に囲まれたナナイモ校地では、さまざまな国際理解教育プログラムが実施され、玉川大学・玉川学園の学生・生徒の学修の場となっている。また、地元ナナイモを中心としたカナダ国内の教育機関などとの交流でも校地を使用。さらに、現地教育機関などの研修や会議等の場として施設の貸出しも行い、地域社会にも貢献している。

1.ナナイモ校地の誕生

玉川学園創立50周年記念事業の柱の一つとして「国際教育の振興」が掲げられた。当時学長だった小原哲郎は、海外での国際教育を推進するための最初のステップとして、カナダ・ナナイモ市玉川学園、現在のカナダ法人玉川学園(通称:ナナイモ校地)の設立を計画した。まずはそのための土地の購入に着手した。その時のことが、玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』に次のように記されている。

「学園の学生、生徒たちをカナダの大自然の中で教育してやりたい。公害のない、空気も水も澄んだ自然環境にふれながら、永遠を想い、労作に汗を流し、勉学にいそしむことの出来るような地を見つけたい」

設立当時、校地の入口に建てられた看板

そう考えた小原哲郎は、カナダ西部のブリティッシュ・コロンビア州、ナナイモ市にある土地を購入した。ナナイモは、ブリティッシュ・コロンビア州最大の都市であるバンクーバーとジョージア海峡をはさんで向かい合うバンクーバー島にある港町。ブリティッシュ・コロンビア州の州都であるビクトリアに次ぐバンクーバー島第二の町である。購入した土地は、ナナイモ市の郊外。そこは、ホールデン湖の東端を含むなだらかな南斜面の牧草地で、面積は約10万坪(約32万平方メートル)、西に1,500メートル級の山々を臨み、まわりは杉の森に囲まれた自然環境であった。周辺の大学の協力、ナナイモ市長やマラスピナ大学(現在のバンクーバーアイランド大学)の教職員の全面的な協力も得られることとなった。そして、1975(昭和50)年、玉川学園カナダ法人が非営利団体として設立を認可された。

2.ナナイモ校地披露式

1976(昭和51)年9月1日に行われた披露式には、小原哲郎学長夫妻をはじめ、前田理事、岡田農学部長、浜田、石田両教授およびロングビーチ短期留学中の学生、生徒79名が参加。現地側は、当時の上院議員レイ・パロウルト氏、農業相ダン・フィリップ氏らが来賓として参列。披露式は盛大に行われた。記念銅板には「玉川大学農場」とあった。式の中で、小原哲郎学長は、ナナイモ校地において教育研究活動を展開する目的を次のように語った。

「第一はこの青空教場を通して、カナダと日本の間に心と心をつなぐ絆を作りたいと思います」
「第二の目的は、玉川とナナイモの学生、生徒に真の国際教育を与えることです」
「第三の考えは、私どもは皆様との触れ合いを通し、農学の実験を通して、この地域社会に貢献したいということです」

ナナイモ校地の披露式
ナナイモ校地

3.ナナイモ校地の使用開始

1976(昭和51)年開設以来、主に玉川大学農学部の海外フィールド、および学術研究の場として利用されてきた。1977(昭和52)年7月22日から8月27日の間には、玉川大学海外協力研究部を中心とした22名の学生がナナイモ校地を訪れ、建物のペンキ塗り、水道浄化槽や湖への桟橋、道作りなどの労作を行った。1978(昭和53)年8月には、アメリカ・カナダ夏期語学研修旅行中であった高等部生たちが、延べ2週間にわたりキャンプでナナイモ校地を使用。こうしてナナイモ校地の活用が進められていった。

ホールデン湖から臨む本部棟
本部棟から臨むホールデン湖

1990(平成2)年から玉川大学農学部のカナダ学外実習がスタート。2003(平成15)年より農学部生物資源学科生物環境情報コースのプログラムが始まった。コースに所属する全学生が4カ月間、マラスピナ大学(現在のバンクーバーアイランド大学)で学修する。コースは2005(平成17)年より生物環境システム学科となり、さらに2017(平成29)年より環境農学科に改組。また、1984(昭和59)年以来、中学部カナダ夏期語学研修の舞台としても活用され、2002(平成14)年からは中学部(8年生)の新プログラムとして、さらに充実した内容での本格的な体験型語学研修がスタートした。2008(平成20)年からは中学部(8年生)IBクラスの研修と、教育学部の野外教育演習がプログラムに加わった。

農学部の野外授業
教育学部の野外教育演習

1978(昭和53)年に農学部が駐在員を派遣。卒業研究などを行う学生の長期派遣も開始した。1989(平成元)年には、駐在員として事務職員を派遣。数年間、何名かの職員が交代でナナイモ校地に駐在した。やがて専任スタッフを現地で雇い、それによって事務職員の駐在はなくなった。1998(平成10)年には、職員の研修として事務職員のナナイモ校地派遣がスタートした。最初のうちは4カ月の研修であったが、やがて3週間に期間が短縮され、2008(平成20)年の研修をもって終了となった。

洋ナシの木と本部棟
八重桜と本部棟・学生棟

4.マラスピナ大学(現在のバンクーバーアイランド大学)との交流

バンクーバーアイランド大学
バンクーバーアイランド大学
トーテムポール献納式

ナナイモ校地が誕生してすぐに玉川と地域社会との交流も始まった。特に現地マラスピナ大学(現在のバンクーバーアイランド大学)との交流が盛んになった。1979(昭和54)年に玉川学園が友好のしるしとして同大学構内に日本庭園(玉川ガーデン)を築園寄贈した。1981(昭和56)年1月19日、マラスピナ大学(現在のバンクーバーアイランド大学)より、その返礼および玉川学園創立50周年の記念として、日本最大級のトーテムポールが玉川学園に贈られた。献納式には、マラスピナ大学長、ナナイモ市長、制作者らが来日した。その高さ10メートル、重さ約3トンのトーテムポールは、現在も屋内プール前の植え込みの中に茶褐色の太い柱の堂々とした姿で立っている。

現在も本学のカナダプログラムにとって、バンクーバーアイランド大学の協力が欠かせない要素となっている。例えば、農学部のプログラムでは重要な部分を占めるのがバンクーバーアイランド大学での学修である。また、8年生(中学2年生)の研修においても、学生スタッフの募集などでバンクーバーアイランド大学の支援を受けている。

バンクーバーアイランド大学での農学部の授業
教員とのディスカッション

5.施設の概要

玉川学園ナナイモ校地のあるカナダ、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー島のナナイモ市は、州都であるビクトリアとともにバンクーバー島の代表的な町。人口は約10万人。ダウンタウンからナナイモ校地までは車で約10分。校地の周りには、湖、湿原、牧草地、森林が広がっている。また、季節の移り変わりとともに多くの野生動物が見られ、周辺環境の自然の豊かさを象徴している。

校地内にいる鹿
ホールデン湖のビーバー

主な施設は、本部棟、学生棟、そしてマラスピナ・玉川ホールと呼ばれる多目的ログハウスの3棟。さらに、中規模温室や農業機械用の倉庫等もあり、農学部の卒業研究などで日本の温室栽培技術を利用した日本野菜の生産を中心に研究・活動を続けてきた。本部棟と学生棟は1989(平成元)年に完成。1999(平成11)年には、ナナイモ校地正門とマラスピナ・玉川ホールが完成した。

左から学生棟、本部棟、マラスピナ・玉川ホール
ナナイモ校地正門
ナナイモ校地正門を入った所
本部棟
学生棟
マラスピナ・玉川ホール
温室

6.農学部のプログラム

生物環境システム学科(2017年より環境農学科に改組)2年生全員が、春学期か秋学期に4カ月間、カナダかオーストラリアで研修を行う。カナダプログラムはバンクーバーアイランド大学での学修が中心となる。ナナイモ校地に到着した学生たちは、学生棟で2泊した後、各ホームステイ先に分かれ、そこからバンクーバーアイランド大学へ通学。バンクーバーアイランド大学の学生数は約1万人。外国からの留学生は、約50カ国から約1千人。他国の学生との交流も日常的。カナダの大自然を活用したフィールドワークなども体験。学生たちは、プログラム終了後には修了証を受け取り、ナナイモ校地に集合してカナダ研修の最後の夜を過ごす。

マラスピナ・玉川ホールにてガイダンス
他国の留学生との交流
植物繁殖学の実習
フィールドワーク

7.中学年のプログラム

8年生(中学2年生)は、ナナイモ校地で6日間の研修を行う。研修はチームビルディングのアクティビティで始まり、4つのアドベンチャーに挑戦する。

  1. ホールデン湖にて、2人1組でカヌーを体験
  2. 近くの森をハイキング
  3. ナナイモ市内の専門施設にてロッククライミング
  4. ナナイモ・ハーバーに浮かぶ小さな無人島にカヤックを漕いで渡り、野外で1泊のキャンプ体験

インストラクターは、アウトドアスポーツを通じて、参加者同士のチームビルディングを行うプログラムなどで世界的に有名なストラスコナ・パークロッジから派遣された専門家たち。生徒たちをサポートするのはバンクーバーアイランド大学で募集した学生スタッフ。コミュニケーションは英語のみのため、生徒たちは日頃学習している英語が通じるか試したり、現地の人の言葉を聞き取ったりすることで、言語や異文化に対する興味や自信を培っていく。研修終了後は、ナナイモ校地のマラスピナ・玉川ホールにてクロージングセレモニーを行う。そして生徒たちはインストラクターより、アクティビティ修了証を受け取る。

カヌー
ロッククライミング
キャンプ
クロージングセレモニー

8年生IBクラスはカナダプログラムの参加が必須。ナナイモ校地に5泊して、現地のIB校と交流を図る。現地の大学や環境施設の見学、さらには「IB環境サミット」を開催する。「IB環境サミット」は、現地のIB校数校をナナイモ校地に招待し、サミットは教員を含め、約100名の規模で行われる。マラスピナ・玉川ホールを中心にさまざまな活動を2日間にわたって行い、さらに宿泊を共にすることで、交流も深まる。サミット終了後は、現地校生徒とともにバンクーバーに渡り、3日間のホームステイを行う。

IB環境サミット
IB環境サミット

8.全大学生を対象としたプログラム

大学では、全学部共通科目(ユニバーシティ・スタンダード科目)に『国際研究D』という授業科目を開設している。本学のTAP(Tamagawa Adventure Program)センターと連携して行う本科目は、ナナイモ校地を拠点として実施している。約2週間、登山とその準備を通して、ESD(持続可能な社会に向けた教育・地域活動・社会システム)を学ぶことを目標とする。到着後4日間は事前の学修や野外演習の準備。そして3泊4日のストラスコナ州立公園での野外演習。ワシントン山の麓からトレッキングをスタート。湖のほとりにベースキャンプを設営し、そこを拠点に山へ向かう。湖の水を飲み、お風呂は湖。もちろん飲み水は、湖の水を薬で浄化したもの。野外演習終了後はバンクーバーアイランド大学を訪問。学生たちと交流し異文化理解を深める。翌日はレポートを提出し、振り返りを行い、プレゼンテーション。その後はナナイモ校地を離れ、ビクトリアやバンクーバーへ。

トレッキング開始
ベースキャンプへ向かう
トレッキング
トレッキング
ビクトリアの町

9.玉川が初

北アメリカ大陸に約32万平方メートルという広大な土地を購入した私立大学は、玉川大学が日本で初めてである。森や湖など大自然に囲まれたナナイモ校地。これからも学生や生徒の環境教育、野外教育、異文化教育など国際理解教育の拠点として、利用されていくことであろう。

参考文献

  • 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』 玉川学園 1980年
  • 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史 写真編』 玉川学園 1980年
  • 『全人』No.797 玉川大学出版部 2015年