学外施設② 北海道弟子屈農場

2017.02.21

北海道の大自然の中で、多種多様な動植物に触れながら教育研究を展開できる弟子屈農場。鹿児島南さつま久志農場とともに、農学部学生の実習の場として重要な役割を担ってきた。

1.弟子屈農場の誕生

開設当初の弟子屈農場

玉川大学北海道弟子屈農場は、阿寒国立公園内にある摩周湖と屈斜路湖のほぼ中間に位置し、雄大な自然に囲まれた施設である。本学がこの用地を取得したのは1972(昭和47)年。最初に購入したのが屈斜路湖畔の50ヘクタール近い土地で、現在は演習林用地になっている。つづいて、12月に取得したのが美留和地区の69ヘクタールの土地。そして、この土地は農学部に委ねられ、牧場を建設することとなった。名称はとりあえず屈斜路酪農研修農場とした。当時学長であった小原哲郎は、同窓会報第39号に掲載された『学長就任記念対談』の中で、当時のことを次のように述べている。

「……今、北海道に35万坪近い土地を購入した……何もない荒地へ行き、己が精神力を問うてみるなり、肉体の限界を試してみるなり、あるいは思索の場とするなりもいいでしょう。それは、今すぐには役立たないかも知れませんが、何十年か後に、必要になるのではないかと考えるわけです。……」

開設当初の弟子屈農場
弟子屈農場内の牧場の牛
美留和駅
美留和駅ホーム

1973(昭和48)年4月から現地管理人1名を委嘱して、必要な作業を行い、第1回目の建設準備作業団を夏休みに派遣した。
牧場建設にあたっては、農学部畜産学担当の石井幹教授が中心となり計画が立案された。そして、できる限り学生の手で実習を兼ねながら牧場建設を行うという方針のもと、石井教授は約20名の学生を連れて現地に赴いた。その当時のことが、『全人教育』第291号(玉川大学出版部発行)の石井教授が書かれた「屈斜路酪農研修農場の建設」に次のように記されている。

「……市街地から十五分で私たちの目的地、美留和につく。ここに農学部の屈斜路酪農研修農場が建設されつつあるのだ。瀟洒な職員用宿舎が右側に、そして青い屋根のカマボコ型の学生用宿舎が左側に向かい合っていて、私たちの到着を待っていた。周りの濃い緑の木立に包まれて、なかなかいい感じ。
私たちは、この研修農場の建設準備隊の先発隊としてやって来たのである。
先発隊の任務は、後から合流する三、四年生の受入準備と詳細な作業計画の作成である。十三日には、総員を引きつれて農場を案内したが、なにしろ七十町の土地である。牧草地ばかりでなく、丘あり、谷あり、林があり、森もある。そのうえ地下水が湧き出ている大きな沼さえあるのである。とても隅から隅までとはいかないが、二時間以上もみんなを引張り回した。
牧草もやや刈取適期をすぎてはいるが、腰の高さくらいに伸び、美しく風になびいている。まさに玉川っ子大草原を行くの図である。北海道自体たしかに広いが、学生たちは、この、私たちの大学の農場の広大さに驚き、また丘から遠く拓けた眺望に感激している。……」

1985(昭和60)年の弟子屈農場

第2牛舎建設
オガクズ庫・倉庫・綿羊舎

2.農学部の実習および研究の場として活用開始

弟子屈農場の誕生以来約45年にわたり、主に農学部が「全人教育」の理念に基づくフィールド実習の場として利用してきた。1973(昭和48)年7月11日、北海道屈斜路酪農研修農場で、農学部の第一回長期宿泊実習が開始された。1984(昭和59)年9月16日には、牛舎が完成した。以後、現在にわたって、肥育牛の飼育、ソバ、ワイン用ブドウの栽培、造林が行われるほか、演習林やその周辺ではエゾシカ、エゾリス、キタキツネなどの動物もおり、豊かな自然環境の中での生態系研究フィールドとして、主に農学部生の農場実習、卒業研究等の拠点となっている。具体的には、農学部の生物資源学科(2017年より生産農学科に改組)3年生(選択)と生物環境システム学科(2017年より環境農学科に改組)2年生(必修)が毎年夏に約1週間の実習を行う。また、卒業研究の調査のために長期に滞在する学生もいる。

1995(平成7)年の弟子屈農場

3.美留和晴耕塾

2014(平成26)年には農場内に宿泊機能を備えた美留和晴耕塾が竣功され、農学部のほか、多くの生徒や学生の教育、研究の場としての活用が期待されている。「美留和晴耕塾」という名称は、北海道弟子屈の地と晴耕雨読に通じる日本人としての基本を大切にしたいという思いから命名された。この施設は、十分な断熱性能が完備されているため、年間を通しての利用が可能となり、学修のチャンスは格段に広がった。 「雄大な自然は、それ自体が偉大な教育をしてくれる」という言葉を、利用者の一人ひとりが、一生心に残り続ける学修体験の場として「玉川の特色ある教育環境」の一つとなることが期待されている。

自習室兼食堂
ラウンジ
宿泊室
左から美留和晴耕塾、オガクズ庫、自然教室、多目的舎
牛舎と美留和晴耕塾

建物は、鉄筋コンクリート造2階建、延床面積は672.46 m2で、あたたかみのある北欧風のデザインをモデルとした。内装も、真冬にも建物を利用することを想定し、あたたかみの感じられるデザインとした。さらに、あたたかみのある内装が一層引き立つように、壁面いっぱいに白木も用いている。また、これらの木材の一部は、弟子屈農場の演習林に生えている、シラカバやエゾ赤松といった北海道らしい木を再利用して、環境にも配慮している。そのほか建物の機能面として、外断熱、二重窓を採用、さらに一般の暖房に加えて床暖房も併用し、厳冬期の北海道でも暖かく過ごせるよう工夫している。

4.本学と弟子屈町が包括連携に関する協定を締結

2015(平成27)年5月22日、学校法人玉川学園と弟子屈町が「包括連携に関する協定」を締結。この協定は、相互の幅広い分野で包括的に緊密な協力関係を築き、持続・発展的に連携を深めることにより、地域社会の発展や未来を担う人材育成に寄与することを目的として実現したもの。この協定の締結により、今後、学校法人玉川学園は、弟子屈町との連携を進め、本学の持つ教育・研究的資産を地域社会の発展や人材育成に向け発信していくこととなる。

関連リンク

参考文献

  • 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』 玉川学園 1980年
  • 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史 写真編』 玉川学園 1980年
  • 『全人教育』No.291 玉川大学出版部 1973年
  • 『全人』No.797 玉川大学出版部 2015年