玉川大学の変遷 Ⅲ 2001(平成13)年~2002(平成14)年

2017.07.21

文学部、農学部、工学部の3学部体制が39年間続いた玉川大学。21世紀を迎えた2001(平成13)年に経営学部、翌2002(平成14)年に教育学部、芸術学部を開設し、6学部体制となった。

1.経営学部の誕生

経営学部校舎(現在の大学1号館)

21世紀を迎えるにあたって、日本経済の急速な国際化や情報化により日本の企業を取り巻く環境が急激に変化し、高度な経営管理力と専門的知識、高い倫理観を兼ね備えた人材育成への社会的な要請が高まりを見せていた。さらに、現代の企業経営が国際社会を前提に展開されていることから、地球規模で物事を理解し、国際的な感覚を身に付けた人材養成も急務であった。このような社会的要請に対応するために、これまでの伝統的な経営学の学問領域を基礎としつつ、国際化社会における新たな教育研究の展開にむけて、経営学部国際経営学科を設置することとした。玉川大学においては社会科学系の学部設置は初めてであった。学部設置にあたっては、文部省(現在の文部科学省)への学部設置認可申請が必要。しかも、当時は認可申請の審査期間が長く、2年審査であった。翌年から1年審査に変更となったため、本学の経営学部の設置の手続きは2年審査の最後の設置認可申請として行われた。設置認可申請のため、学部・学科を設置する必要性、教育内容、教員組織、施設・設備、学生確保や就職の見通しといった審査のほか、専任教員審査、寄附行為変更認可申請審査が行われた。書類審査、さらには面接審査、実地審査を経て、2000(平成12)年12月21日付けで経営学部の設置認可が下りた。そして翌年の2001(平成13)年4月1日、玉川大学4番目の学部として経営学部が誕生。5月26日には経営学部開設記念レセプションおよび講演会をホテルニューオータニで開催した。

授業風景

経営学部の開設は、玉川大学の長年の夢だった。1962(昭和37)年に、文学部の英米文学科の中に「商業貿易専修」を設置。1969(昭和44)年には「商業貿易専攻」に改称。1977(昭和52)年には「理財専攻」に名称を変更し、さらに理財専攻という名称が経済学専攻の旧称で当時ほとんどなじみのない名称だったため、国際的な視野から社会学を学ぶにふさわしい「国際経営専攻」に改称した。1989(平成元)年4月のことであった。さらに1995(平成7)年4月には国際経営コースに名称を変更。以後、国際経営コースは経営学部が誕生するまで続いた。

授業風景

本学の経営学部では、英語運用能力と情報処理能力育成のための新たなシステムを導入。英語の授業においては集中英語プログラムを用意し、TOEFLやTOEICに対応した米国大学のESL(第二言語としての英語習得)方式をモデルに、ネイティブ・スピーカーの教員を中心に授業を展開。英語で考え、話し、書くことができる体制を整備した。このように先進的な英語教育を導入し、英語運用能力の強化を図った。コンピュータを中心としたIT教育については、学生にノート型パソコンの常時携帯を義務付け、いつでもどこでも学習できるシステムを整備。具体的にはロータス社のラーニング・スペースというソフトウェアを使用し、学生へインターネットを通じて教材を提供し、自学自習を促進。このことが評価され、当時、インターネットを用いたディスタンスラーニング(遠隔教育)の分野では国内有数の先進校と言われた。また、プレゼンテーション技術向上のために、プレゼテーション専門の教室を設置してテレビ会議システムを導入。このように、今では当たり前ではあるが、当時としては先進的な試みを経営学部では導入した。

2.農学部の学科名称の変更

農学部は、1964(昭和39)年4月より37年間、農学科、農芸化学科の2学科体制を続けてきたが、時代の変化に対応するため、2001(平成13)年4月1日より農学科を生物資源学科に、農芸化学科を応用生物化学科に名称変更した。これにより、人口問題、食糧問題、クローン技術、地球環境問題など現代社会が抱える重要課題に生命科学の視点からアプローチする教育・研究体制が整った。同時に自然環境教育を展開するためのフィールドサイエンス科目を開講し、独自の資格制度「自然環境教育インストラクター制度」を設置。グローバルな視野でサイエンスの使命を深く理解した、倫理観にあふれる人材を育成。

農学部第1校舎(当時)
農学部第2校舎(現在の大学7号館)

生物学を基本とする生物資源学科は、生物生産・流通科学領域、植物機能開発科学領域、応用動物昆虫科学領域、生態・環境科学領域の4領域で構成、生命を化学として捉える応用生物化学科は、生物化学領域、食品機能化学領域、細胞制御化学領域、生物環境化学領域の4領域で構成。なお、2005(平成17)年に応用生物化学科を改組して生命化学科を設置、あわせて生物資源学科にあった生物環境情報コースを独立して生物環境システム学科を開設、3学科体制になった。さらに現在の農学部は2017(平成29)年4月1日より生産農学科、環境農学科、先端食農学科となっている。

実験の授業
鹿児島南さつま久志農場での実習

3.文学部の改組

教育学科、英米文学科、外国語学科、芸術学科の4学科体制だった文学部を改組。4学科の学生募集を停止(4学科とも2005年3月31日付廃止)して、2002(平成14)年4月からは新組織へ。具体的には、文学部教育学科は教育学部に、文学部芸術学科は芸術学部にそれぞれ発展・独立し、文学部は英米文学科と外国語学科を改組して人間学科と国際言語文化学科の2学科を開設した。

文学部校舎(現在のELF Study Hall 2015)

人間学科は、「人間」について、哲学、心理、宗教、倫理・道徳、教育の5つの視点から多角的に学び、総合的に人間学の教育、研究を行う。その教育、研究を通して、豊かな教養と協調性を備え、対話的共生力、発想力、自己教育力、研究力を有した人材を育成。国際言語文化学科は、言語と文化を有機的に結びつけて学ぶことができる学科で、国際貢献(国際機関・企業等)、リサーチ&ティーチング(言語教育、教員養成等)、ヒューマン・サービス(観光マネジメント、パブリック・サービス等)、国際文化交流(マスコミ、文芸、情報通信等)など広範囲の学習が可能。単なる語学力ではない発信型言語運用能力や実践的なIT運用能力を備えた意欲的に世界で活躍できる人材を育成。なお、翌年の2003(平成15)年にリベラルアーツ学科(2007年にリベラルアーツ学部として独立)を増設、2006(平成18)年には国際言語文化学科を改組して比較文化学科を開設、さらにその比較文化学科を改組して2015(平成27)年には英語教育学科を、2017(平成29)年には人間学科を改組して国語教育学科をそれぞれ開設した。したがって現在の文学部は英語教育学科と国語教育学科という言語系の2つの学科で構成されている。

読書室(現在のTAMAGO Lounge)
授業風景

4.教育学部の開設

玉川大学では、1947(昭和22)年の大学創設以来、文学部教育学科を置き、学校教員の育成のみならず、広く家庭や社会で活躍できる教育者を養成してきた。特に教育学研究を根底においての教育指導者の養成を行ってきた。しかし、グローバル化や情報化、あるいはいじめや学級崩壊など教育を取り巻く環境が大きく変化し、教員養成に対して社会からさまざまな新しい要請が出てきた。また、人々のより豊かな精神生活を支える学芸員や図書館司書等の高度な文化人材など広い意味でのヒューマン・サービス専門職に携わる人材の養成も求められてきた。そうした状況において、これまで教育界に多くの優秀な人材を送り出してきた「教育の玉川」としての実績を生かして、社会からの要求に応えるべく、教育学部教育学科を設置することとした。2001(平成13)年4月27日に設置認可申請書を文部省へ提出。当時は届出という手続きがなかったため、「大学の設置等の認可の申請手続等に関する規則」の第六条の設置認可申請の手続きの特例(六条改組)を使って申請を行った。これが現在の届出の手続きに変化していった。2001(平成13)年12月に設置認可が下り、教育学部が2002(平成14)年4月1日に開設となった。これに伴い、文学部教育学科は学生募集を停止し、2006(平成18)年3月31日付で廃止。さらに、翌年の2003(平成15)年に乳幼児発達学科を増設。以後現在に至るまで教育学部は2学科体制で教育研究を展開している。なお、通信教育部も文学部教育学科を同様に学生募集停止(2011年3月31日付で廃止)し、通学課程と同時に教育学部教育学科を開設した。

教育学部校舎(当時)
教育学部校舎(当時)

文学部教育学科では総合人間学、乳幼児科学、健康科学の3コース制を採用していたが、教育学部では将来の進路や興味に応じて学生のニーズに対応したプログラム制を導入。プログラム制は、教育学研究、初等教育、幼児教育、社会/公民/国際理解教育、教育未来構想、体育/健康教育、乳幼児保育という7つのプログラムから構成されていた。2017(平成29)年現在では、教育学科は、初等教育専攻、社会科教育専攻、保健体育専攻の3専攻制となっている。教育課程では特に、国際社会、情報化社会を視野において、英語運用能力、情報処理能力の育成に力を入れた。さらに「サービスラーニング」の導入など教育現場での体験学習を重視したカリキュラムを編成している。

教育実習
情報処理の授業

5.芸術学部の開設

テクノロジーの急速な発展とその活用は、近年、特定の分野や業界のみならず、一般の社会生活にも種々の変化と恩恵をもたらすようになった。例えば、全国各地にある各種の芸術・文化施設が見事に整備された。こうしたハード面での充実の変化は、それを活用する各種のプログラムの開発、運営スタッフの育成、さらには、一般社会のなかで芸術マインドを普及させるといったソフト面の充実をも促している。このような状況の中、芸術教育の分野も従来の枠組みでは必ずしも十分に対応しえない現実に直面していた。そのため、このような時代の変化と社会のニーズに応えるため、これまでの文学部芸術学科の教育実績を踏まえ、さらなる教育の充実と発展をめざし、芸術学部を設置することとした。教育学部設置と同様に、2001(平成13)年4月27日に設置認可申請書を文部省へ提出し、六条改組の手続きにより、2001(平成13)年12月に設置認可が下り、芸術学部は2002(平成14)年4月1日に開設となった。芸術学部はパフォーミング・アーツとビジュアル・アーツの二つの学科から構成。パフォーミング・アーツ学科は演劇、音楽、舞踊という上演・演奏形態を伴う芸術表現を、ビジュアル・アーツ学科は各種のデザイン、映像、コンピュータ・アートなどの今日的な視覚表現メディアと、伝統的な絵画、彫刻、工芸などを扱う。

芸術学部校舎(現在の大学3号館)
 奏楽堂(当時)

文学部芸術学科では芸術表現コースと芸術文化コースを設置していたが、芸術学部はコースを採らず、従来の芸術表現コースは「芸術創造」「芸術応用」、芸術文化コースは「芸術研究」「芸術企画・経営」という履修モデルを学生に提示。カリキュラムの核としての授業は、パフォーミング・アーツ学科は「パフォーマンス」、ビジュアル・アーツ学科は「エキジビション」で、両科目とも講義や実技の成果を一つにまとめ上げ、学内はもとより、国内各地や海外でも発表することを目的としていた。なお、2014(平成26)年より、芸術学部はパフォーミング・アーツ学科、メディア・デザイン学科(2006年に増設されたメディア・アーツ学科を改組)、芸術教育学科の3学科で構成されている。ビジュアル・アーツ学科は、メディア・デザイン学科、芸術教育学科の設置に伴い、2014(平成26)年4月から学生募集を停止した。

コンピュータミュージックの授業
演劇・舞踊公演

参考文献

  • 玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』 玉川学園 1980年
  • 『玉川大学経営学部設置認可申請書』 玉川学園 1999年
  • 『玉川大学教育学部・芸術学部設置認可申請書』 玉川学園 2001年
  • 小原芳明監修『全人教育』No.622 玉川大学出版部 2000年
  • 小原芳明監修『全人教育』No.630 玉川大学出版部 2000年
  • 小原芳明監修『全人教育』No.631 玉川大学出版部 2001年
  • 小原芳明監修『ZENJIN』No.637 玉川大学出版部 2001年
  • 小原芳明監修『ZENJIN』No.639 玉川大学出版部 2001年
  • 小原芳明監修『ZENJIN』No.643 玉川大学出版部 2002年