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宗教教育

2013.03.21

キリストの教えをもとに、教育のための宗教

玉川学園の校歌の独自性、それは歌詞の3番に如実に表れている。

「神ゐ(い)ます み空を仰げ 神はわが遠つみ祖(おや)……」
創立当初から歌われているこの校歌は、玉川学園の心、そのものである。本学では、特定の宗派の伝道を目的とせず、広い意味での宗教心を一人ひとりの心に持たせたいという小原國芳の思いを引き継ぎ、宗教教育を重視している。

人間であれば、だれでも心の深いところで神ないしは神的な何かに触れる。また、触れることがなければ、真の人間は育たない。その機会を与えること、これが本学における宗教教育の基本理念である。その宗教観は、時代とともに少しずつ形を変えながら、終始一貫して玉川教育を支えてきた。

小原國芳は成城学園で教壇に立っていたころから、自らの手でつくり上げる「夢の学校」では、宗教教育を徹底させたいと考えてきた。明治維新前の寺子屋教育の第一信条は「神第一、仏第一」であったが、1899(明治32)年、文部省により宗教教育が禁止されると、教育の場から“神仏を尊ぶ心”までもが消え去ってしまった。國芳はそれを常々、遺憾に思っていたのである。

小原國芳がキリスト教と出合ったのは、1905年(明治38年)。鹿児島師範学校1年生のときであった。國芳は鹿児島市内で伝道をしていた女性宣教師ランシングを通じてキリスト教を知り、それが生涯をかけた宗教教育の基盤となった。

ただ、誤解のないように付記するが、玉川学園はいわゆるミッションスクールではない。特定の宗教団体が学校運営をしているわけでも、特定の宗教の布教活動を目的としているわけでもない。教育の根本に宗教心の育成を掲げているが、宗教のための教育ではなく、教育のための宗教なのである。それを端的に示したのが小原國芳の言葉(『玉川教育』1963年版)だ。

「人間生活の中では、芸術にせよ、道徳にせよ、学問にせよ、ないしは健康にせよ、経済にせよ、政治にせよ、一切の根底に宗教が存在しとるのです。否、宗教はそれらの原動力として、一切を照し、浄め、力づけ、深め、高めてくれるのです。然るに、この崇い人間生命の根源力を否定したり、無用視したり、甚だしきは排斥する人が居ります。全く恐しいことです」

玉川大学の学則にも「本大学は……キリストの教えに従い……『全人教育』をもって教育精神とし、……。宗教、芸術教育を重んじ、魂を醇化し、淨らかな情操を養成し、厳粛な道義心を涵養する……」とある。「キリストに」ではなく、「キリストの教えに」としたところに、本学の宗教教育の特色が表れているといえよう。

宗教教育の目に見えるシンボルとして、校歌とともに息づいているもの、それが礼拝堂だ。礼拝堂は、1930(昭和5)年6月、聖山の丘の上に建設が開始され、同年10月13日に開堂式を執り行った。

創立から現在までの宗教教育を振り返ってみると、原点ともいえるのが、玉川塾における早朝の聖山礼拝である。塾生は毎朝、全員で聖山に集まり、祈りと讃美歌を歌い、一日をスタートさせた。

この積み重ねは、礼拝堂での訓話につながっていく。特に礼拝という形は取らなかったものの、これがのちの礼拝の原点となった。小原國芳の話は説教型ではなく、伝道型でもなく、いうなれば教育型で幅広い内容のものであった。教育の根本には宗教がなくてはならない、人格の形成には宗教心が必要であるという信念に立って、玉川学園の教育はかくあるべきだという思いが、繰り返し語られた。それは学生の心を揺さぶらずにはおれない熱情のほとばしりであった。 

全学生・生徒・児童が1万人近くなった現在でも、本学では礼拝を重視し、授業のなかに組み入れている。創立当時とは状況が変わったにせよ、K-12では毎週1回チャペルで礼拝を行い、大学では1年次の必修科目として「宗教講話」を開講している。

また、2000(平成12)年4月4日に、幼稚部校舎の南側に、聖山にある礼拝堂とは対照的な設計のチャペルの献堂式が行われた。このチャペルには、玉川の丘から一人でも多くの「地の塩、世の光」(マタイ伝第5章14節より)となる子供たちが育っていってもらいたいという願いが込められている。日本の教育現場では、宗教、神の言葉について語られなくなって久しいが、玉川では今も、子供の健やかな成長には宗教が欠かせないと考えている。献堂式では小原芳明学園長が「21世紀へ向けての教育の信念を記す意味で、このチャペルを献堂します」と献堂の言葉を述べた。

参考文献
小原國芳『宗教教育論』玉川大学出版部 1972
小原芳明編『全人教育』5月号 No.623 玉川大学出版部 2000
小原芳明編『全人』6月号 No.729 玉川大学出版部 2009
玉川学園編『玉川教育―1963年版』玉川学園 1963
玉川学園五十年史編纂委員会編『玉川学園五十年史』玉川学園 1980 

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