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学長・学園長メッセージ

2012年度へ向けて
  学長・学園長 小原芳明
  学長・学園長 小原芳明
これからも社会を発展させるために、子供たちの知識を豊かにすることは重要です。今日では、小学校から大学までが知識生産の基礎づくりを担うようになっています。20世紀初頭では、人類が持つ知識が倍増するのに100年ほどかかっていましたが、現代ではそれは加速度的に速まり、倍増するまでの速度は年単位ではなく、やがては月単位となると予測されています。これはまた、知識の新陳代謝の速さでもあります。そして、それを促進しているのが地球規模での高度情報化です。高度情報化は、誰もがどこからでも何時でも情報を入手することを可能としますが、さらなる新しい情報への要望が、情報ネットワークの拡幅と高速化を促進し、それが情報生産の速度をより一層高めています。

今後ますます加速度的に変化する社会に相応し、学校教育のあり方も変化していきます。現代のようにネットワークが高度に整備された社会では、はたして従来のような校舎での教育が必要なのかの議論もあります。この問題に関して、一部の欧米の学者は、高速ネットワークが普及するにつれ、校舎は必要条件ではなくなると主張しています。そして近年の遠隔教育の広がりに見られるように、大学教育はますますネットワーク化されていきます。

長い間、学生たちは黒板と教授と対面して授業を進めていました。しかし、玉川大学ではInformation Communication Technology (ICT)の充実により、過半数の授業が「ブラックボード」との併用で行われています。これは従来の対面授業(Face to Face)に遠隔教育という側面を加えたもので、ネットワーク時代に相応しい授業形態の一つです。また、大学よりも一歩先んじて教育のネットワーク化を推進してきた玉川学園では、CHaT Net (Children Homes and Teachers Network)により、10年前までは想像できなかった教育手法で日々の教育を推進しています。

このように ICTの活用は、これからの教育にとって校舎は必要ないとの印象を与えます。しかし、社会が人間対人間 (F2F) を基本としている限りにおいて、次世代の社会人育成を担う学校教育もF2Fといった対面授業を重要な基本とすべきだと私たちは考えています。知識社会で活躍するために必要となる知識の量は膨大なものですが、そうした知識を得る手段にICTは有益であり、F2Fの教育を補強するものと位置づけています。

これからの大学教育が果さなければならないことは、限られた就学期間のなかで、知識基盤社会が必要とする知識や技術を子供たちに教えることです。刻々と変化する社会は、大学にとっての新しい需要を生じさせています。アナログ社会では「アナログ知識」が需要されたように、デジタル社会では「デジタル知識」が必要となってきます。次世代の子供たちがアナログ型社会からデジタル型社会へと変化していくなかで、新しい時代の需要(デマンド)に応え、子供たちがデジタル社会からとり残されないようにすることが、小学校から大学までの教育に問われています。

確かに新しい時代には、新しい教育のあり方が求められています。しかし、人間が人間であるための「心の教育」も必須不可欠です。玉川学園・玉川大学も時代の変化に対応してカタチを変えていきますが、教育信条は時代を超えて普遍なものです。デジタル知識が普及してきても、知識の正邪善悪を識別する力、価値の有無高低を判定する尺度は必要です。それは科学知識そのものには価値観がないからです。その判断は機械ではなく、知識を活用する人間自らがしなければならないことです。そのための心の教育も、また社会が必要としていることです。

デジタル知識は人間を超える存在を否定するでしょうが、玉川では宗教教育を通じて、人間の弱さや限界を知る機会を提供しています。どの時代にあっても、誰もが答えなければならないテーマに、己と他の存在意義を知ること、そして「人間とは何か?」の問いがあります。この問題は時代を超えて人類が挑戦してきたものですが、玉川はそのための機会を提供していきます。

昨年3月11日、わが国は激甚な被害を受けました。それは自然の破壊力と人間力との格差を露わにしたものでした。高度成長を背景に自由、権利、快楽、享受を主としてきた日本人でした。しかし、それらの基盤である社会を復興させるには、責任、義務、犠牲、貢献の価値観は欠かせません。Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country とのケネディー元米大統領の言葉が真に相応しい時です。日本人が1945年に焦土化した日本社会を見事に復興させたことを思い出し、それぞれがこの大震災からの復興に向けて貢献できる力を養う時です。社会貢献できる人を養成する役割を私たちの使命としています。

2012年4月1日


学長・学園長プロフィール
小原芳明
1946年東京生まれ。
玉川学園小学部・中学部を経て高等部2年生より、Roxbury Latin School ( Massachusetts, USA) 留学、同校を卒業後 Monmouth College (Illinois, USA) へ進学。さらに玉川大学大学院文学研究科修了後、Stanford University, School of Education (California, USA) にて教育政策分析専攻修士課程修了。
1987年、玉川大学文学部教授。国際教育室長・文学部長・副学長を歴任したのち、1994年より学校法人玉川学園理事長・玉川大学学長・玉川学園学園長。
その他、日本私立大学協会理事、文部科学省「大学設置・学校法人審議会(学校法人分科会)」委員、国立大学法人上越教育大学外部理事。
主な著書及び訳書:「アメリカ高等教育の大変貌」、「アメリカ大学の優秀戦略」、「ハーバード大学の戦略」、「授業の評価」、「教育の挑戦」。


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