玉川学園 玉川大学 2013
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Tamagawa Academy & Tamagawa University 2013K-12 数学教育将来につながる数学的センスを磨く量子情報科学研究実用化をめざした『Y-00量子暗号』=量子エニグマ玉川学園の5-8年生(小学5年生-中学2年生)の数学では、日々の授業の中で論理的な思考力や数学的センスを身につけることを大切にしています。数学は公式や解法を覚えれば答は導き出せますが、“なぜそうなるのか”という問題の背後にある論理を理解しなければ、本当の意味で数学を理解していることにはならないからです。ことがらを図で表したり、いろいろな方法で解けたり、見通しを持って答えを導くことができるなどの数学的センスを培うために、学年が上がるにつれて教師側が様々な工夫を凝らした指導を実践して、生徒自らが数学的な見方・考え方の良さを発見するように配慮しています。5・6年生はクラスごとに指導する中でグループ作業や発表の機会を多く設けて、協力しながら問題解決する力や発表表現する力を伸ばしていきます。7・8年生では、生徒の学習状況を見極め、必要に応じて幾つかのコースに分けて授業を行い、習熟度別を採ることによって、数学に前向きに取り組む意欲を育みます。さらに、それまで積み重ねた学習内容の習熟度を維持するために、定期試験のほかに10回の計算テストを実施しています。授業の中でしっかりと問題の背景にある論理を考え理解させ、それを復習のための計算テストで確実に身につけさせます。このような様々な取り組みによって“なぜそうなるのか”を考えて学習する習慣を身につけさせ、それを継続的に積み上げていくことにより高等学校段階での数学に対応できる能力を培います。玉川大学では、世界に先駆けて量子情報及び量子通信の基礎理論を1980年代から研究し、2011年4月に量子情報科学研究所を開設しました。この研究所は量子情報科学の基礎研究を推進する「量子情報科学研究センター」と、量子情報理論の成果から導き出された新原理や新手法を社会で有益な技術に発展させる研究開発を行う「超高速量子通信研究センター」を設置しています。玉川大学は量子情報科学分野の研究者を育成する原点ともいえる世界最大の”量子通信国際会議”の創設にも携わり、世界では“この分野のファウンダー(創立者)”とさえ言われています。ここから巨視的量子効果を用いた新量子暗号である光通信量子暗号が発明され、サイバー攻撃に対処する最強の切り札として近未来に実用化が期待されています。昨年には40ギガビット毎秒という超高速なデータを暗号化して通信する実験に成功し、現在、国内外の企業と共同開発が進められています。本年より、この技術を暗号の王の称号である「量子エニグマ」と呼ぶことになり、世界標準を目指して研究を積み重ねています。また2012年、ノーベル物理学賞史上初めて量子情報科学分野からフランスのセルジュ・アロシュ博士とアメリカのデビッド・ワインランド博士の2人が受賞しました。この2人はともに玉川大学が創設した「量子通信国際賞」を受賞しており、本学の研究所とは両博士のグループが原理実験を発表した時から交流が続いています。今回のノーベル賞受賞をきっかけに量子情報科学分野の研究の加速が予測されていますが、本学でも“ファウンダー”だからこそ実現できる実用化をめざした研究はますます加速していきそうです。

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