学校法人 玉川学園 Puente 2013.06 vol.03
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Puenteたまがわ│17■ Tamagawa Annual Report│新時代への取り組みグローバルCOEプログラムを終えて脳科学研究所応用脳科学研究センター主任坂上雅道 教授ヒトの「無意識の行動」を科学する 玉川大学脳科学研究所が中心となって提案し、2008年度グローバルCOEプログラムとして採択された、「社会に生きる心の創成」。5年の期間を終えたこの研究活動に関して、拠点リーダーを務めた坂上雅道教授に話を伺いました。「脳は我々のこころを作り出し、行動を生み出しています。そこで、こころの動きと脳の仕組みについて調べてきました。fMRI(機能的MRI)を使い、脳内の血流の動きを調べることで、脳のどの部分が活動したかを探っていくのです。考えるという行為は、言い換えれば判断を繰り返すことですが、研究過程で無意識に判断を決定する仕組みがあることが分かってきました。たとえば車の運転に関して言うなら、人は赤信号を見ただけで無意識にブレーキを踏み、カーブにさしかかれば自然とハンドルを切ります。どの段階でブレーキを踏み、ハンドルを回したのか、後になって運転した本人に聞いたとしても、明確なところは覚えていません。このように無意識に行っていることは、私たちの毎日の中に数限りなくあるんですね」。多くの分野に活かせる、こころの解明 こうしたこころの動きを解明すると、どのようなことができるのでしょうか。「こころについて解明できれば、さまざまな人の性格もより正しく捉えることができ、コミュニケーションを深めることにも繋がります」と坂上教授。教育、社会制度、福祉など、こうした研究が活かされる分野は少なくありません。「たとえば自殺する人の脳の仕組みを解明することができれば、自殺防止につなげることができるかもしれない」という話もあり、期待も膨らみます。この「社会で生きる心の創成」の研究は、グローバルCOEの活動としては一旦ピリオドを打つことになります。けれどもその研究成果が多くの分野で活かされ、社会で重要な役割を担うのは、むしろこれからなのかもしれません。

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