学校法人 玉川学園 Puente 2014.06 vol.04
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Puenteたまがわ│29■ Alumni and Alumnae│全国で活躍する卒業生の好ましい取引を行うには、それぞれの地域の特性(カントリーリスクも含め)を良く理解し、コンサルタントの知見として指導する必要があります。平松 コンサルタント業界は、太田さんのご指摘された課題を自分で作れる人でないと難しい。コンサルタントばかりではありませんが、自らステップアップで きること、足を使って常に現場を見ることが大切ですし、パワーポイントとプレゼンテーション技法だけでは、経営者は動かせません。牟田 私も業界の変化を感じています。我が社は、年間200本以上のセミナーを開催しています。年間数百人のコンサルタントにお会いしていますが、骨太の経営論を話せる人が少なくなりました。コンサルタントもどんどん細分化されているので、経営全体を話せる人が極端に少なくなっています。今でも松下幸之助氏や稲盛和夫氏が脚光を浴びているのはそのためです。野渡 ところで、IEは日本以上に東南アジアを中心とする海外で求められておりますが、何かエピソードはございますか。太田 現状では現場力が大きく落ちています。以前はしっかりと教育研修が行われ、改善力をつけるようにIE・QC教育を行っておりましたが、失われた20年といいますか、いつの間にか現場力を育成する教育が疎かになり日本のモノ作りを支えてきた現場力の低下に危機感を持っています。牟田 逆に、企業サイドでは情報の流失を恐れて、以前ほどオープンではありません。IT関係や食品関係では、公開しない会社が多いです。野渡 そうですね。情報管理はかなり神経質になっています。現場力の低下は大学カリキュラムや若手教員の現場嫌いの研究姿勢も問題です。以前のカリキュラムでは、学外企業実習は3年、4年ともに必修でした。夏休みは全くありませんでしたが、教員も含めて実践力の蓄積には大きく貢献していました。是非復活してほしいと思います。実習中にオヤジからいただいた自筆の暑中見舞いには大いに感動しました。事務方にも学生に対するきめ細かいサポートが求められます。牟田 長いところでは経営が親子三代にわたって我が社をご利用いただいていますが、最近は継承トラブルが増えてきています。事業を次世代につなげるには莫大な相続税や株の問題があります。社長と息子さんの橋渡しをして、オヤジの思いはこうだとその意を伝えることもしています。後継者不足問題や国内市場縮小化がいわれていますが、着実にやっている会社も勿論ありますので、このような会社はチャンスもあると思います。平松 それは感じます。日本の市場もまだまだあって国内市場も捨てたものではありません。野渡 中国や東南アジアの賃上げは、日本のものづくり復活のチャンスです。それには、国内でしっかりとものづくりを行える工場を持つ必要があります。IE教育の充実は、産学ともにますます求められます。野渡 最後になりますが、コンサルタント業界を目指す在学生へのアドバイスや心意気をお願いします。太田 「Will」。自分の意思を持つことです。自分の言葉でメッセージを発しようとする思考にオリジナリティが生まれます。「私ならこうする」、「私の考えはこうです」と考えるとともに実践して欲しい。そこで恥をかいても、自分の稚拙さが表にでないと成長できないという面もあります。玉川の人間力を磨いてほしい。僕がやってこられたのは、玉川で育まれた人間力だと思います。毎回、新しいことに興味を持ち続けないとこの仕事はだめです。今までの蓄積と新しい知恵とチャレンジ精神で臨むパワーが必要です。世の中のためになると思ったことを突きつめてやり続けること興味を持ち続けることがすごく大事です。平松 コンサルティングの基本はお節介みたいなものです。「こんなことで困っているでしょう」とピンとくることが大切なのです。だからお節介が面倒くさくなったら引退かと思いますね。それと、5年から10年は何といわれようと続けることでしょうね。私が本を書くきっかけは、大手書店の経営コーナーに玉川の先生方の本が多くあり、ここに自分の本も1冊くらい入れてみたいなと思ったことでした。先生を目標にして欲しいと思います。牟田 「強く必要とされる存在になる」というのが我が社の理念です。企業30年説など言われていますが、お客様から強く必要とされれば、商品でも、会社でも人間でもずっと輝き続けられます。そういったキルケゴールの「実存主義哲学」が我が社の考え方です。お客様からいつまでも必要とされるようなコンサルタントを目指してほしいと思います。野渡 若い時は暗中模索で自信もなかなか持てないのですが、若い時の失敗は肥やしになります。積極果敢に何事もトライして頂きたい。継続は実績となり形となります。コンサルタント業界に限らず、何事にも興味を持ち続けてほしい。これは、自己実現による自身の人生に対する責任でもあります。●本日はお忙しいところありがとうございました。文責/野渡 正博平松 陽一工学部経営工学科1974年卒組織コンサルティング活動を経て、83年IM(アイエム)コンサルタント代表となる。独自に開発したノウハウを駆使した効果測定技法には定評がある。東日本大震災以降、三陸地方の企業を回り、人材開発を通して企業の再建を行っている。「営業成績をグングン伸ばす22の行動改革リスト」(セイワコミュニケーション)など著書多数。太田 大作工学部経営工学科1969年卒株式会社クロスオーバー代表取締役社長・株式会社日本能率協会コンサルティング常任顧問・一般社団法人日本ビジネスプロセス・マネジメント協会理事。ロジスティクス、生産管理、経営戦略など多岐に渡るコンサルティング実績を持つ。牟田 太陽文学部教育学科1996年卒日本経営合理化協会 専務理事。大学卒業後にはアイルランドに渡り、世界観を拡げる。帰国後、日本経営合理化協会に入協。触れ合うほとんどの方が経営者、コンサルタント、著名人という環境の中で経営手腕を磨き、2010年より現職に。幅広い人脈から、事業継承問題に関しても多岐にわたる経験を持つ。野渡 正博工学部経営工学科1971年卒玉川大学講師、助教授、教授。この間、ミシガン大学、パデュー大学等客員教授。2014年玉川大学定年退職、同年4月名誉教授。博士(心理学)、博士(工学)。心理学、経営工学関係の著書、論文、国際発表多数。

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