学校法人 玉川学園 Puente 2014.06 vol.04
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Puenteたまがわ│07■ Special Talk│玉川の教育 これまで、そしてこれからPROFILE玉川大学農学部生命化学科教授学術研究所生物機能開発研究センター主任博士(農学)1960年愛知県生まれ。名古屋大学農学部農芸化学科卒業後、筑波大学大学院で学び、1987年三菱化学株式会社に入社。米国アリゾナ大学客員教授を経て、2003年より玉川大学にて勤務。2008年より現職。Hiroyuki Watanabeトにしています。対象年齢は主に小学校低学年。高学年になると親離れが始まるし、自分の人生の指針のようなものが小学校5年生頃に出来上がることが多いので、その前段階を重視しています。そして工作や実験を親子で取り組むことを重視し、何かを親子一緒に行うことで、家族の絆を深める機会を作っていますが、それが大人同士の結束や地域のつながりなどへの波及効果もあり、喜ばしいことです。渡邉先生はお父様から機械や部品に触れる機会を遊びのように多く与えられ、センスが磨かれていったのでしょう。そのような舞台を日常的に与えることは、親の役割だと思います。そして私たちは、「KU-MA」などを通して真剣に子供たちと会話しながら、センスの芽を見つけ、育みたいのです。渡邉 私は父親だけでなく、小学校低学年でお世話になった先生の影響を非常に強く受けています。おそらくセンスの芽を潰さずに育んでくださったのだと思います。その後の私の人生において大切な位置づけの先生に出会うことができたのは大変幸運でしたし、親となり教員となって、子供が得意になるような部分を伸ばすことの重要性を痛感します。的川 玉川学園の建学の精神にある「全人教育」は、センスを磨きあげていく時代にたくさんの舞台を与えるという考え方ですね。それぞれの子供が、自分の色を発見できるチャンスが格段に増す仕組みというのは、理想的だと思います。渡邉 見学していただいた「Future Sci Tech Lab」の建設計画時、植物工場研究施設なので「宇宙農場ラボ」を配置する予定はありませんでした。玉川学園では探究心や独創的な研究ができる人材の育成を目指して「理科教育」に非常に力を入れているので、「宇宙農場ラボ」は必ず役立つと提案して実現できました。小学生を案内することも多いのですが、植物工場ではそれなりに「きれいだね」とか「すごいね、イルミネーションみたい」(笑)とか言うんですが、「宇宙農場ラボ」へ行くと、途端に子供たちの目がすごく輝くんです。日本の農業問題のような目先の現実も大事ですが、「頑張ったら、宇宙で何かできるかもしれない」といった子供たちの夢や可能性、思考力や視野を一瞬にして広げてくれるんですね。宇宙を材料にした教育は、子供たちの直感を呼び覚ますのに非常に重要だと改めて考えさせられます。的川 先ほどの宇宙教育は、宇宙マニアや宇宙研究の後継者を育てるものではなく、かけがえのない命は宇宙と一体だと感じ取れる心を養いたいのです。アメリカの惑星探査機「ボイジャー1号」が1990年に太陽から約60億km離れた位置から地球を撮影した1枚の写真‘Pペールale, Bブルーlue Dドットot’があります。宇宙のど真ん中に小さな青白い点のように地球がぽっと浮かんでいる写真をじーっと見ていると、「宇宙の長い進化のプロセスで生まれた地球とそこで生活する70億あまりの人びと」を実感します。空間的、時間的に、私たちは宇宙の中に包まれていることを考えさせられる写真です。これをある街の子供たちに見せて、感じた言葉、思い浮かんだ言葉を一語で書かせたら、65%くらいが「いのち」とか「命」と書いたのです。私は50年くらい宇宙研究を続けてきて、ようやくたどり着いた境地でしたが、それを子供たちも感じていることに驚くとともに、地球に生きるさまざまな「いのち」を写真から感じ取れる子供たちを頼もしく思いました。私たちの世代はいつも国籍を基準にせざるを得ませんでしたが、子供たちは世界を一体のものとして考えている。これからの世代は科学でも哲学の世界でも、新しいものを作り上げていくのだろうと、とても期待を持っています。渡邉 「‘Pペールale, Bブルーlue Dドットot’の写真を見てどう思うか」と考える機会を与える、あるいは提案するという、発想力を育てる教育は大きな力がありますね。「宇宙」は世界観と直結する発想を育む、そのような役割を担っている分野だと思います。的川 子供たちと接してつくづく、「この子たちは、未来という時代から、大人が預かっているのだ」と感じます。私たちに託された預かりものを、立派に磨き上げて未来に返すのが教育です。「Future Sci Tech Lab」や「LED農園」のように、未来につながる研究をスケール大きく実践するモチベーションは、玉川学園の実践する教育に大きく貢献することでしょう。渡邉 一生の記念に残る対談をさせていただきました。ありがとうございました。未来から託された教育の役割を考える対談が行われた「Future Sci Tech Lab」Future Sci Tech Lab内で栽培したレタスを前に

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