学校法人 玉川学園 Puente 2015.06 vol.05
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企業のトップとして常に先を見続けている岡山さんに、2020年のオリンピックへの思いを伺いました。 「日本を訪れる多くの外国人が地震を心配しています。日本は地震対策の先進国としてアクションを取ることが必要だと思います。いつでも地震が起きるという前提に備える。建物と、その中の人間の安全を確保する。そしてこれからはその先を作り上げる必要があります。現在、地震後の生活、ライフライン、地域の安全を提供するインフラの整備が不十分です。弊社も民間の取り組みに積極的に参加していますが、早急に国の政策を定め進める必要があります」。オイレス工業は、現在2000棟に免震を施しています。「地震が発生した場合、日本の製造業の生産ラインを止めないように整備すべきです。2011年の地震では、部品の製造が滞ったために、海外に仕事を奪われた企業が多くありました。このような事態を回避するため、設備に対する免震の取り組みが強化されました。災害時に人命を守ることが第一ですが、さらに人々の生活を確保するための水、電気等の社会インフラを守ることも重要になります。これらの手助けをしたいと思っています」。リニューアルした玉川学園の正面玄関は美しい噴水が印象的で、四季折々、心地よい風が訪問者を出迎えてくれます。古き良き時代に思いを馳せる卒業生には、少々驚かれるかもしれませんが、百聞は一見にしかず。進化し続ける玉川学園で新たな風と母校の安全を支える卒業生がいることを感じてみてください。Puenteたまがわ│27たのかを伺うと、「わかりません(笑)。突然スイッチが入ったわけでもなく、日々の会議や業務の中で自分の意見を述べ、表現するうちに鍛えられました。例えば研修中の討議で意見を出すと、周りの接し方が変わってくる。自然に序列のようなものができあがります。今のポジションは一夜にしてできたものでなく、企業生活40年をかけて周りが自分を応援し、認めてくれた結果です。そして与えられたチャンスをものにしてきた成果だと思います」。努力したのですか?とお聞きすると、「努力はしていません。むしろ努力を努力と思うようではだめです。自然にできないと。やらなければならないことが、やりたいことになっていたのだと思います。倫理観は自分の中に確立するものですから、努力するとか、自分はこれを頑張るとか、そういう意識はありません」ときっぱり。オイレス工業株式会社と大学教育棟 2014との縁は、社長に就任された2011年6月末に始まりました。「学長からお祝いの胡蝶蘭をいただき翌月お礼に伺った際に、新しい図書館の話題になり、30分の予定が長引いて倍の時間に(笑)。東日本大震災が起きた年で、免震の話題になりました。館内の人間の安全を守るのは当然として、例えば地震で崩れた何万冊もの本を元に戻すのがどんなに大変か。最悪の場合、内側に開く扉が開かなくなる可能性もある。玉川学園で生活する子供の安全を確保できれば、親御さんが安心して子供を預けられる。現在の少子化を考えても、設備を整えて安全性を打ち出すことは学校にとってもいいことだ」とお話ししました。さらに、「玉川ならではの『風』を生かし、エアコンの人工的な『風』でなく、自然風が入る換気システム」を提案しました。その後、小原学長が本社工場を訪れ、設備の採用を決定されました。岡山さんは、母校に安全、快適、安心を提供し、企業が培ってきた理念を母校に還元したいそうです。「学内の免震装置の導入に卒業生が関わることも素晴らしいと思いました」。「母校を支える卒業生」の取材を受けたこともその思いのひとつです。「玉川大学文学部を卒業して、製造業の企業のトップになるのは珍しいことです。事実、技術開発型企業であるオイレス工業でも文系出身者が社長になるのは難しいと言われています。私は玉川学園を出ても一部上場企業のトップになれるというモデルを見せたかった。優しくて性格がいいと言われている玉川の学生、卒業生に強さ、勇気、希望と自信を持って欲しいのです」。文系の柔軟さと理系の論理性をバランスよく持ち、所々にパワフルな男気が感じられる岡山さんによる社員向けの行動指針「よく知りよく考えすばやく実行しできるまでやる」にもその特徴が表れています。 「まず、やらなければならないこと。やろうとしていることを明確にする。(例: 顧客、製品、トレンド)次に、何ができるか、どこまでできるのか、いつできるのかを明確にします。そして策を講じ、それを素早く実行すること。あきらめないで最後までやり遂げることが大切だと思います」。オイレス工業株式会社 Oiles Corporation東京都港区港南一丁目2番70号http://www.oiles.co.jp/■ Alumni and Alumnae│全国で活躍する卒業生社名の由来はOil Less (油がいらない、少なくて済む)。軸受機器、構造機器、建築機器の3つの事業を主な柱としており、国内外に2,000件の特許を有する技術開発型の企業。オイルレスベアリングとは、無給油あるいは給油の回数や量を大幅に減少させることができ、省資源・環境への配慮の観点から自動車をはじめ各種産業機械などに幅広く採用され、ベアリングから派生して開発された免震・制震の技術は人命、社会的財産や都市機能などを地震から守る技術として社会的にも関心の高い領域です。Profile│岡山俊雄 さん玉川学園中学部、高等部、玉川大学1975年卒業。同年オイレス工業株式会社入社。2005年上席執行役員、2006年取締役を経て2011年代表取締役社長に就任。玉川池の大学教育棟 2014の免震工事に携わり、新たな教育・研究活動の推進に協力。座右の銘は、「艱難汝を玉にす」(かんなんなんじをたまにす) 人は困難や苦労を乗り越えることによって初めて立派な人間に成長するということ。玉川のモットーに近い意味です。最初から自分でやる。自分でやると手をあげる。そうすれば、誰よりも早く多くを経験できる、最初にやることに意義があると思っています。

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