全人 ZENJIN 2018特別号
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全人特別号│07■ Special Talk│未来に向けて――❶岡田教授は、「小原芳明学長からは『種まきと、商品として形を整えて包装する部分をロボット化できれば完全自動化になる』と早く開発するよう催促されているんですが、これが一番難しい。例えばレタスの種は1~2ミリ程度ととても小さくて、それを均等にまくのが難しいんです」と、苦笑まじりに説明しました。 「この冬は寒さが厳しくて、野菜の栽培に影響が出ていますね。とくに葉物野菜の価格が高騰していますが、LED農園®なら天候に左右されず収穫できるから、価格も安定するし、私たち消費者にとっては心強い栽培システムですね」と村田さんは話していました。 次に訪れたFuture Sci Tech Labでは、多段式水耕栽培システムや、さまざまな野菜の栽培実験について渡邉教授が解説すると、「赤や青、緑に染まる栽培室は近未来の世界ですね」と熱心に観察しました。渡邉教授が独自に開発したLED冷却技術を応用したLED照明装置「ダイレクト冷却式ハイパワーLED(玉川大学と昭和電工アルミ販売で特許取得済)」や、「付加価値の高い野菜生産」を目指した研究成果の一つとして、カリウム制限が必要な腎臓病患者さんに向けた低カリウムの野菜栽培など、LEDによる野菜栽培の将来に多くの可能性があることを解説しました。また、宇宙空間での食料生産についての研究を、当施設の一角の「宇宙農場ラボ」で行っている様子を見学しました。 その後は、さまざまな色の光で栽培されたリーフレタスや青シソを試食。「生育過程において細かくLED光のバランスを調整することで、栄養価が高く、さまざまな風味や食感が楽しめるようになります。品種ごとにLEDの色を変えており、青いLEDを当てると野菜はストレスを感じ、ビタミンやポリフェノールなど抗酸化成分を取り込んでやや苦みが出てきます。一方、赤いLEDを当てると葉が大きく成長し甘みが出て、野菜嫌いの子供にも大人気なんですよ」と渡邉教授。 村田さんは、「同じ品種のリーフレタスでもLEDの色によって味が変わるんですね。しゃきしゃきして美味しい!」と採れたてのリーフレタスを喜んで味わっていました。また、「昨年の小原芳明学長との対談の際にキャンパス内を車で案内していただき、LED農園®とFuture Sci Tech Labの前も通りましたが、こんなにカラフルな環境で栽培されているとは想像できませんでした。見ていて、とてもおもしろいですね。私たちの生活や健康にも役立つLED栽培を母校が牽引していることにも、期待がますます高まります」と語っていました。 その後は岡田教授との対談が行われる工学部のAIBot研究センターへ移動。未来を見据えた最新研究をテーマにした対談は、次ページをご覧ください。宇宙や医療分野で活用が広がる未来型LED農業の成果を味わう村田沙耶香さん作家。小3の時から小説を書き始める。玉川大学文学部芸術学科で芸術についても学ぶ。2016年『コンビニ人間』で芥川賞を受賞。岡田浩之教授玉川大学学術研究所 AIBot研究センター主任、玉川大学工学部情報通信工学科教授。「赤ちゃんの成長過程」と「認知発達ロボティクスの研究」に従事。渡邉博之教授玉川大学学術研究所 生物機能開発研究センター主任、博士(農学)。玉川大学農学部先端食農学科教授。長年、LED植物工場を研究。PROFILE⬆学生から説明を受ける➡渡邉教授とFuture Sci Tech Labを見学

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