Future Sci Tech Lab

2010.04.01

「植物工場・宇宙農場ラボ」と「超高速量子光通信」の2つの研究施設が完成しました

本研究施設は、近未来に実用化をめざす二つの研究「植物工場・宇宙農場ラボ」と「超高速量子光通信」の二つの研究拠点となっています。両研究ともに国内、国外から注目される研究領域であると同時に夢を現実に近づけていく研究といえます。この研究施設から近い将来、最先端の技術が発信されることが期待されます。その思いは、本研究施設の名称にも込められています。

近未来に実用化をめざす二つの研究
 Future = 夢、未来
 Sci Tech = Science Technology を一体とした造語
 Future Sci Tech Lab
 Quantum Information & Plant Factory

最先端技術を積極的に社会に発信していきます

構造・規模:鉄骨造 地上2階建て
面積:建築面積897.84m²
延床面積1667.51m²

環境を配慮した建設
太陽光発電により建物内の電力として使用
外壁レンガタイルのリサイクル材の使用
VOCを発生させない建材の使用
外壁断熱材使用による熱欠損の軽減
開口部の制限による熱負荷の軽減
人感センサーによる照明制御を採用し消費電力の制御
建物内廊下のLED照明機器によりCO2排出量の軽減
全熱交換機による空調負荷の軽減

植物工場研究施設・宇宙農場ラボ

植物工場研究施設では、都心のビルでも地下室でも作物が栽培できる新しい農業技術の開発をめざし、無農薬で安全な作物生産の実証実験を行います。またそれを広く紹介するための情報発信施設の役割を担います。室内には多段式水耕栽培システムを設置し、植物栽培用に新しく開発したダイレクト水冷型ハイパワーLEDパネルを光源にして、レタス、サラダナ、イチゴ、トマトなどの栽培実験を行います。宇宙農場ラボでは、宇宙ステーションや惑星基地において作物を栽培できるシステム開発を行います。ここでは植物にとって擬似的な無重力状態を作り出す栽培装置や、減圧下での水耕栽培システムを設置し、仮想宇宙空間での作物栽培実験を行います。

LEDを光源とした植物工場の研究


新しい農業の形として植物工場が注目されています。天候に左右されず、効率的かつ安全に作物を生産するこのシステムは、食料不足が予想される将来、世界的に必要不可欠な技術と考えられています。現在、蛍光灯や高圧ナトリウムランプを光源とした植物工場が提案されていますが、植物工場研究施設では、世界で初めてダイレクト水冷システムを導入したハイパワーLEDを主光源としたシステムを構築しました。これは波長制御がしやすいというLEDの特長を活かしながら、きわめて高い光出力とLEDチップの耐久性を両立させた技術であり、LEDの特長を植物工場にうまくフィットさせた実用的なシステムといえます。

宇宙空間での食料生産をめざして

植物工場における要素技術は、宇宙空間での食料生産を可能とする宇宙農場を実用化する技術でもあります。「宇宙農場ラボ」と名付けた実験室では、宇宙ステーションや火星などの惑星基地での食料生産をめざし、LEDを光源とした擬似的な無重力条件での植物栽培実験や、大気圧の十分の一以下の低圧下で植物の生育を可能とする栽培システムの開発を行い、宇宙空間での作物栽培をめざした研究を推進します。

超高速量子光通信施設

解読不可能な超高速新量子暗号の原理を米国ノースウエスタン大学と共同で開発しました。これにより、従来の量子暗号通信に比べて1億倍の通信速度が可能となります。日立情報通信エンジニアリング株式会社の協力により2.5Gbit/sec の試験装置が完成し、量子暗号開発では世界のトップランナーとしての地位を確立しました。2009(平成21)年には、情報通信研究機構の受託研究として10Gbit/sec 対応装置の作製に成功しました。これらの実績により、その実用化に向けた開発が期待されています。
本研究施設ではその期待に応えるため学園MMRC(マルチメディアリソースセンター)と光ケーブルで結び遠隔授業などの応用実験や、第二世代量子暗号の開発を行います。

新量子暗号の実用化、製品化に向けた開発を開始

次世代インターネットであるデータセンターを基盤とするクラウド・コンピューティング・システムでは、盗聴用データセンターによる盗聴専門ビジネスが台頭する危険性が指摘されています。その対応策として新量子暗号Y-00が提案され、それを通常の光通信技術で実現する方法が玉川大学で発明されました。2009(平成21)年度には、日立グループの協力を得て、10Gbit/sec という大容量光通信に応用できる玉川大学方式量子暗号装置を開発しました。

新設のFuture Sci Tech Labにおいて、世界最速の玉川大学方式量子暗号を改良し、それによる世界最長の500km通信実験や無圧縮ハイビジョンTV双方向伝送実験を行います。この量子暗号を大容量光通信によるインターネット網に展開するために、通信会社や企業によって研究されている光ネットワークプロジェクトに参加し、光ルーターによる全光ネットワークの構成法などを開発します。さらに製品化に必要な安全性の定量化を実施するために、模擬的な盗聴装置を開発し、解読不可能性を保証するための諸元策定を行います。

また、基礎研究として、2009(平成21)年に開発された第二世代玉川大学方式量子暗号である Hirota-09 プロトコルの実現技術の研究を開始します。この次世代方式は、暗号通信の後で暗号に用いた秘密鍵が盗まれても解読されない理想的な暗号になることが保証されます。この成果は日本経済新聞を始め多くのマスコミで紹介され、実現法の開発が期待されています。

ネットワークの安全性を保証する技術は21世紀の情報文明を円滑に運営するために必然的なものです。本研究施設で開発された技術が完成すれば、ネットワークの真の安心を提供することができ世界中に導入される可能性が期待できます。玉川の丘から世界標準の技術が発信されるように研究スタッフ一同、最善を尽くします。

Future Sci Tech Lab 科学技術と芸術のコラボレーション

超高速量子光通信、LEDなど新しい光を使用した宇宙開発につながる植物工場。両研究の共通キーワードである「光」「宇宙」をモチーフに芸術学部は、ここで行われている研究、実験テーマから拡がる理論、考え方をもとに建物外観を造形化し、光によるアートワーク“Cosmic Photon Streams”を制作しました。
さらに、光や色彩を科学的に研究し、点描画の技法を確立したフランスの画家ジョルジュ・スーラの作品『グランド・ジャット島の日曜日の午後』を美術陶板で再現し、外壁に展示しています。点描画のように研究成果を一つ一つ積み重ね、最先端の科学技術を確立することを願い作品が選ばれました。

Cosmic Photon Streams

Cosmic Photon Streamsと名付けられた建築外部の光の造形は、実際に宇宙などから飛来する自然放射線~宇宙線をセンサーでとらえ、数百の超高輝度の発光ダイオードを488個のスワロフスキー大型クリスタルで拡散させ、さまざまな光の表情を生み出すアートワークです。この造形は、あらかじめプログラムされた演出ではなく、季節や時間で日々変化するため、見る人と宇宙との一体感を生むことができます。
※ディスプレイデザイン賞2010入選

美術陶板『グランド・ジャット島の日曜日の午後』

ジョルジュ・スーラは印象派の絵画をより科学的に追求し、「視覚混合」と呼ばれる点描画を確立した画家です。この作品は一筆一筆、色を重ねて完成した作品であり、スーラの色彩理論の研究成果が具現化されたものです。美術陶板は地球にやさしい自然の土と釉薬(ゆうやく)を高温で焼くことにより、耐久性にすぐれ、屋外でも退色や変色、変質を起こしにくく、いつまでもその美しさを保ち続けることができます。