てんかん発作の新たなメカニズムを発見

2010.12.09

-「ジャーナル オブ ニューロサイエンス」誌に論文を発表-

玉川大学脳科学研究所などの研究グループは、てんかん発作を引き起こす新たな脳細胞のメカニズムを発見。これまで薬による治療が不可能であった病態について、新たな治療薬開発に向けた基礎データとしても期待されます。この成果をまとめた論文が、米国の科学雑誌『Journal of Neuroscience』に、2010年10月13日、冊子およびオンライン版に掲載されました。

「てんかん」は、脳細胞のネットワークに起きる異常かつ過剰な電気活動のため引き起こされる疾患です。その治療法は一応確立されてはいるものの、薬物が功を奏さない「難治性てんかん」も存在します。難治性てんかんは、大脳の海馬を切除する以外に治療法はなく、また外科的切除法も適用できず治療法のない症例も報告されています。てんかんは今もなお、新たな治療薬・治療法の開発が待たれている疾患です。

本研究では、てんかん患者の中でも多く見られる「側頭葉てんかん」を引き起こす要因を追究。発作の焦点として知られる大脳の海馬の標本を用いて「てんかん発作モデル」を作製し、発作活動に関わる個々の神経細胞を詳細に検討しました。その結果、正常状態では他の神経細胞の活動を抑制している「介在細胞」が、てんかん発作発現時には抑制作用が興奮作用に逆転し、てんかん発作の原型と言える「同期的リズム活動」を引き起こし得ることを発見しました。この結果は、興奮性伝達物質であるグルタミン酸の作用を遮断した条件下でも得られ、介在細胞のネットワークのみで発作が引き起こされることを明らかにしました。この新メカニズムが原因となって引き起こされるてんかんは、介在細胞の抑制作用を強化することを狙った従来の抗てんかん薬では治療不可能と考えられます。実際に、実験により、抗てんかん薬とは逆の薬理効果をもつ薬物が、本研究におけるてんかん発作を完全に消失させる結果も得られました。

この研究成果は、てんかん治療薬の新たな開発のための基礎データを提供するだけでなく、神経細胞のネットワークが引き起こすリズム活動の生成メカニズムに関する基本原理を個々の細胞レベルで明らかにするために役立つと考えています。

論文名

Prototypic seizure activity driven by mature hippocampal fast-spiking interneurons
J. Neurosci., 30: 13679 - 13689, 2010
(海馬の抑制性介在細胞によって駆動されるてんかん発作の新機構)

著者

塚元葉子(玉川大学脳科学研究所)
礒村宜和(玉川大学脳科学研究所)*研究グループ責任者
今西美知子(東京都神経科学総合研究所)
二宮太平(京都大学霊長類研究所)
塚田 稔(玉川大学脳科学研究所)
柳川右千夫(群馬大学)
深井朋樹(理化学研究所脳科学総合研究センター)
高田昌彦(京都大学霊長類研究所)

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