研究計画

1.最先端実験を行うための環境整備と技術開発

本事業の中核的な施設整備計画である脳神経回路への遺伝子導入施設の整備を行い、実験技術開発を開始する。遺伝子工学、光遺伝学、多点同時記録法、システム神経科学を融合し、従来の研究では不可能であった神経回路機能の選択的な操作を実現する。開発する技術の1つとして、ドーパミンD1およびD2受容体特異的にCreを発現するラット(D1R-Cre, D2R-Cre rat)に、チャネルロドプシン(ChR2-eYFP)またはハロロドプシン(NpHR-eYFP)を発現させるウイルスベクター(AAV) の線条体への注入することで大脳基底核の直接路細胞と間接路細胞を蛍光で識別させ、LED光を照射することによって細胞の放電を誘発または抑制させる技術とする。プロジェクト後半で、ここで開発された技術を使い、単一の脳部位の情報処理を調べることに留まっていた従来の脳科学研究から、意思決定や社会性行動に関与する脳部位間の情報処理の因果関係を明らかにする研究をおこなう。

2.ヒトの社会性という人文・社会科学的テーマを生物学的に理解する学際研究を推進できる研究体制の構築

本プロジェクトでは、①神経科学研究という軸と②人文社会科学分野である人間の集団の中での行動選択(社会行動)や言語やコミュニケーションに関する研究という軸の2軸を融合させるアプローチの研究を行う。具体的な研究計画は以下の通りである。

①神経科学研究:

大脳基底核線条体、中脳ドーパミン細胞、視床線条体系、大脳皮質前頭葉を対象に動物実験による神経科学研究と、ヒトを対象とする脳機能イメージング研究を行い、意思決定の神経回路基盤について独創性の高い研究を実施する。分子遺伝学の最先端技術を導入して脳科学研究のレベルを格段に上げる。意思決定の神経回路基盤に関する研究は国内外で競い合って進められているが、本研究拠点においては動物実験による神経科学研究、ヒトを対象とする脳機能イメージング、更に計算理論モデルによって脳機能を理解する研究を行う研究者が揃っており、それぞれが連携、融合研究を実施することによってパラダイムシフトを生み出すための拠点に必要な具体的な体制、設備とプログラムを創り上げる。

②社会科学・社会心理学研究:

人間の社会性行動の中でも特に重要な「公平感」、「社会的価値の割り当て」、「社会的意思決定」について、行動実験、心理学実験と脳機能イメージング実験を連携して推進する。

③認知・発達研究:

脳科学研究所に構築されている赤ちゃんラボは、国内外において希少で独創性の高い施設である。赤ちゃんの言語発達、幼稚園児による他人との信頼関係構築の過程などについて、行動研究、心理学研究及び認知科学研究を進める。

3.国際的に活躍できる若手研究者の育成

意思決定、社会性行動、認知発達の学際的脳科学研究を推進できる研究者の育成には、国際的に活躍できる人材育成が必要である。本プロジェクトのメンバーであるカリフォルニア工科大学の教員との共同研究を推進し、英語で行われるプロジェクトミーティングに参加したり、英語でのリサーチプレゼンテーションを行うことで国際性を養う。また、私学戦略特別講演会を実施し、世界的に活躍する研究者を招聘しセミナーを開催する。また、同時に若手研究者との交流会等も行う。また、共同研究実施のため若手研究者をカリフォルニア工科大学へ派遣することも行っていく。