量子エニグマ暗号 Quantum Enigma Cipher(QEC)

エニグマ暗号から量子エニグマ暗号へ

基本知識

暗号の基本

秘密鍵:暗号化装置の動作を決定する秘密の短い文字列あるいは数列。
暗号化装置:秘密鍵にしたがって、通信文を乱雑に並べ替える装置。
暗号文:通信文が暗号化装置によってスクランブルされた後の文字列あるいは数列。

暗号解読の基本

暗号文の傍受:無線や有線で送られる信号を傍受して正確な暗号文を入手。
解読作業:暗号文と関連情報から秘密鍵を推定する作業。

エニグマ暗号

旧ドイツ軍が利用した秘密鍵による機械式暗号化装置である。この暗号は当時の科学技術では解読が不可能と考えられていた。それは暗号化装置によって作り出される暗号文のパターンが膨大な数となるため、秘密鍵を推定するために全てのパターンを試みることは現実的に困難であったことによる。

歴史

エニグマ暗号とアラン・チューリング

エニグマ暗号を解読するには秘密鍵を推定する必要がある。その組み合わせパターンは1京以上あるが、英国の数学者アラン・チューリングはエニグマ暗号の構造とポーランドが開発した計算装置の改良装置を用いて、1940年に解読に成功した。その後、計算機の重要性に気付いたチューリングは現代の電子式コンピューターの理論と構成法に対する最大の貢献となる研究を成し遂げた。

エニグマ暗号から数理暗号へ

エニグマ暗号は現代の数理暗号の祖と言え、暗号の開発において際立った貢献をした。1977年に暗号の世界標準となったDESは機械式のエニグマ暗号の概念をコンピュータで置き換えたものと言っても、的外れではない。 暗号化の過程は数学的な概念で構成され、秘密鍵に従って通信文がスクランブルされる。
しかし、その構造は原則として公開されるため、秘密鍵の可能性の数によって安全性が評価される。 商用のDESの鍵のパターンは約7京であり、当時のコンピューターの能力では解読不可能であった。しかし、コンピューターの進化と暗号化過程の数学分析の開発によって、解読の危険性(危殆化)が指摘され、新しい暗号の開発が加速した。しかし、これらの基本は、秘密鍵の長さを一定にして、より高度な数学的暗号化過程を開発するものであり、これらは一般に数理暗号と呼ばれる。

数理暗号から物理暗号へ

数理暗号を解読するには秘密鍵を推定する必要がある。その組み合わせのパターンを全てコンピューターによって試みることを全数探索という。この方法以外に解読法がない時はほぼ安全と言える。しかし、数理暗号は数学的な構造を持つため、その構造を分析する事により、秘密鍵を推定できる可能性が残る。この場合には、ショートカットが見つかったということになる。この弱点をなくすため、数理に物理現象を融合させる種々の物理暗号が開発されている。

量子エニグマ暗号へ

秘密鍵を持つ数理暗号の暗号文を量子物理的な雑音等によって乱数化する機構を持つ時、その暗号機構を物理ランダム暗号と言う。代表的なプロトコルはYuen-2000(通称Y-00)である。
これは、数理暗号によって光信号を変調し、秘密鍵がない受信機では、SN比が劣化する機構によって暗号文が乱数化される。このため、量子雑音ランダムストリーム暗号とも呼ばれる。しかし、これは原理的な方式を示唆したもので、この機構のみで暗号文の完全なランダム化は難しい。
真に、定量的安全性を保証するため、物理暗号の暗号文が量子雑音効果によって完全な乱数になる機能を付与された暗号機構を、秘密鍵を基盤とする暗号の頂点を意味する量子エニグマ暗号と言う。