アマミサソリモドキ

石の下に隠れていた成体。触らなければ攻撃してこない

鹿児島南さつま久志農場には、とても奇妙な生き物が棲息している。石や植木鉢などを動かすと高い確率で遭遇する、アマミサソリモドキである。立派なハサミを持ち、後端に針がついており、まるでサソリのような特徴があるが、クモに近い仲間でクモ網サソリモドキ目に分類される。英名ではビネガロンと呼ばれ、肛門腺から強烈な酢酸(さくさん)を噴射することから名づけられている。

外敵に遭遇するとハサミを広げ、針をこちらに向けてくるため、危険な生物と思われがちだが、物理的な刺激を与えなければ攻撃してくることはない。しかし、至近距離で噴射液を受けて、それが目や皮膚に付くと火傷のような炎症を起こすので、注意が必要である。

日本では鹿児島県が自然分布の北限であるため、サソリモドキにとって鹿児島の冬は厳しいようだ。

この時期はじっと寒さに耐えているのだろう。隠れ場所にしていた石を動かされると、迷惑そうにゆっくりと次の隠れ家を探しに行く姿には愛嬌も感じられる。

奇妙な見た目とは裏腹に食味は良いらしく、当地のイノシシはサソリモドキを好んで捕食している。 酢が効いて美味しいのだろうか。

(農学部技術指導員 深澤元紀)
『全人』2017年1月号(No.812)より

アマミサソリモドキ

学名:Typopeltis stimpsonii
英名:Amami whipscorpion/vinegaroons
サソリモドキ科

サソリモドキの仲間は熱帯、亜熱帯に分布し、アマミサソリモドキは九州南部から沖縄で見られる。夜行性で、日中は石の下などの湿った暗い場所に潜んでいる。肉食性のため間近にいる生物に襲い掛かる習性があり、共食いも多く、通常は単独で生息している

年末に収穫期を迎える農場のポンカン。果樹園の石の下にもサソリモドキが潜んでいる
鹿児島 南さつま久志農場内の倉庫の壁で撮影。とても迫力があるが、全長は70mmほど