ヒサカキ

1cmに満たない小さな白い花を咲かせる(写真は雌株、学内農場にて3月上旬撮影)

お供え用の「サカキ(榊)」として売られている切り枝は、東日本ではこの「ヒサカキ(姫榊)」であることが多い。学園内でも聖山周辺をはじめ、そこここに多く見られる低木である。日陰や刈り込みに強いため、住宅地などにも多く植えられているが、自然に散布された種子から殖(ふ)えた株も多い。

ヒサカキの花が咲くのは立春の少し後、2月下旬から桜の咲く頃まで。ツバキ科の植物と聞くと、ツバキやサザンカのような、赤やピンクの大きな花を期待されるかもしれないが、ヒサカキの花は白く小さく、数は多いものの、葉に隠れてあまり目立たない。

この花の特徴は、なんと言ってもその香りである(臭気とも呼べそうだ)。今号の発行される時期はちょうど花の盛り。興味のある方は、ぜひ小さな花に顔を近づけて嗅いでみてほしい。おそらく、多くの方が覚えているだろう――下水道が整備された現在の街中では出合う機会がめっきり減ってしまった、バキュームカーが発散するあのにおいがするのだ。

今や珍しくなったにおいとともに、ヒサカキはささやかに春の訪れを告げているのである。

(農学部教授 山﨑 旬)
『全人』2017年3月号(No.814)より

ヒサカキ(姫榊)

学名:Eurya japonica
ツバキ科

岩手、秋田以南の全国に広く分布する。低木だが、ときに10m程になることもある。日陰に強く、生け垣や庭園樹に用いられる。雄株と雌株があり、それぞれ雄花、雌花を咲かせる。神前に供えられるサカキ(ホンサカキ:Cleyera japonica)は、同科だが別属で、西日本に自生が多いとされる。開花も6月頃で、ヒサカキとは生態的に大きく異なる

ヒサカキ(左)はサカキ(右)に比べて葉が小さいため「姫榊」と書く。葉に鋸歯(葉縁のギザギザ)が見られる
秋から冬にかけ、雌株にびっしりと付いた小さな黒い実が熟す