クロヤマアリ

スイカの花蜜を吸いに来た働きアリ

俗に言う「クロアリ」とは、ほとんどの場合クロヤマアリを指すだろう。日本中どこでも見ることができる、日本を代表するアリだ。公園や校庭などの比較的開けた場所に好んで巣を作る。

巣の中には一~数個体の女王アリと、その子どもである数千の働きアリが暮らしている。女王が産卵に専念する一方、働きアリは産卵をせずに、女王と幼虫の世話や巣の掃除と防衛、採餌など様々な仕事を担当する。なかでも重要なのは弟と妹にあたる幼虫の世話だ。脚がなく、眼や触角も発達していないなど、アリに似つかわしくない姿の幼虫は、自力で移動することさえもできず、働きアリ無しには生きられないためである。

本種は多くのアリと同様に昆虫などを餌とする一方、甘い蜜も好きなようで、植物が出す花蜜に集まる姿もよく見られる。そうなると体に花粉をつけて花から花へ移動することもあるが、ハチのように植物の受粉を助けることはない。土中のようにジメジメとした環境で暮らすアリは体中に抗菌物質をまとっており、それが花粉を殺してしまうため、受粉を成立させることができないのだ。

(農学部助教 宮崎智史)
『全人』2017年9月号(No.819)より

クロヤマアリ

学名:Formica japonica
ハチ目アリ科

働きアリの体長は4.5~6mm程度で、灰色がかった黒の体色を示す。北海道から九州まで、日本中に広く分布する最普通種である。校庭や公園、民家の庭など比較的開けた場所に営巣するため、人目につくことが多い

クロヤマアリの巣の内部。身体の大きな女王アリは巣の奥で産卵に専念する
クロヤマアリの卵(左)と幼虫、蛹(右)。幼虫は卵に見えるかもしれないが、頭や節があることで区別できる