『全人』2011年3月号 No.748 より
読書の喜び、読書が広げる世界、読書のきっかけと大切さ。それらすべてが美しい文章にまとめられた今月号の巻頭、小池昌代氏の「鍵のはずれた庭──本との出会いかた」。萩原朔太郎賞受賞の詩人であり小説家でもある小池氏は、絵本や詩の紹介にも意欲的です。とくに今回は子どもにとっての読書を中心に寄稿いただきました。
連載「家庭力」では精神科医の香山リカさんにインタビュー。就活や仕事の選択に関して、学生も大人もとても力づけられるお話です。
研究エッセイは、玉川大学教育学部の寺本潔教授による「地図学習から広がる世界」。英米で注目され始めたグラフィカシーという学力の観点から日本の小学校での地図学習のあり方を探ります。今月の学園ニュースでは、ミツバチ科学研究会、ESD推進フォーラム、玉川環境フェスティバル等の開催内容を詳しくレポートしました。
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とは言え、うちの子は、本を読まない。ゲームとテレビ、ドラえもん。ゲームの途中で何か言うことも、理不尽にナタを振り下ろすことに違いはないが、バランスの問題は、いつでもある。いつか、この子も本を面白いと思うようになるのだろうか? 視覚に訴える刺激が圧倒的な時代である。現代の子供たちは、想像力をあらかじめ奪われているのではないかと思うことがある。(略)
本を読むことは、はっきり目覚めながら夢を見ること。文字を通し、想像力=創造力を駆使して、人間はそこにないものを作り上げる。そのとき自分の肉体及び脳髄のなかでどんなことが起こっているか。個人の内側に映っているものは、残念ながら他人には見えない。それは一回限りの上映である。しかも読むたびに、映像を作り直すことになる。
想像力という言葉は死んだと言う人がいるが、そうだろうか? 想像力は死なない。人間が自由でいられるための、これは最後の切り札である。「鍵のはずれた庭──本との出会いかた」 小池昌代 p4
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なにごとも、そのときの現象でしかありません。受験も就職も、そこで出た結果が良いとも言えないし、悪いとも言えません。進路はどこにどうつながっているかわかりません。一喜一憂せず、「とりあえず、今はこうなった。良し悪しの判断は保留」というスタンスが大切と思います。ずっと先にしか、答えなんて出ないものじゃないでしょうか。
自分の人生についても、子どものことにしても、「ああ、すごく成功している」とか、「ああ、もう最悪だ」と、その場で結論を出すのはおかしい。10年前の人気企業が人員整理をしている時代です。将来は何が起こり、どんな逆転や、どんな良いことがあるかわかりません。だから、どんな局面でも、もう心配ないと安心できないし、逆に、失敗して取り返しのつかないことなど何もないのです。「家庭力43/香山リカ」 p20
目次
- 鍵のはずれた庭──本との出会いかた…小池昌代
- 学園ニュース
- [大学]インターカレッジ・コンピュータ音楽コンサート…高岡 明
- [大学]教育学部主催・ESD推進フォーラム開催
- [大学]第1回玉川環境フェスティバル開催…根上 明
- [大学]第33回ミツバチ科学研究会開催…中村 純
- 学術研究所だより 10
国内唯一のミツバチ総合研究機関 ミツバチ科学研究センター
- K-12 FOCUS 10
世界の仲間と学び合う。教室から広がる国際交流
- 子どもの本で世界をまわる 10
ひと言哲学が冴える仏文学〈フランス〉…荻野アンナ
- 見つめる&見つめ直す…家庭力 43
香山リカ 精神科医
- 玉川の丘めぐり 10
門出を祝う「卒業式」…白柳弘幸
- Book Review 79
『iPS細胞』…西村哲雄
- 行事報告
K-4年生 玉川学園音楽祭…土本麗子
- 課外活動訪問 10
吹奏楽団=初めての海外公演
- 研究エッセイ
地図学習から広がる世界…寺本 潔
- たまがわ健康教室2010
予防接種の正しい考え方
- Career Navigation '10
仕事インタビュー〈飲食 調理〉&イベントスケジュール
- 平成22年度 礼拝献金についてのご報告
- 学外施設定期便 10
世界を繋ぐキルティング〈カナダ/ナナイモ〉…岡田雄峰
- 同窓会インフォメーション
岩手支部よりお国自慢
- 学園日誌…小原芳明
- Photos of the Day│4、5年生スキー学校
- 学園スケジュール│玉川大学・K-12のイベントと入試に関するご案内
- 表紙の風景│Thaw 堤谷美雪 【作】
- 教育博物館館蔵資料紹介 231│幼稚保育法見習規則…菅野和郎
- TAMAGAWA HEADLINES 学園近況
- 玉川の仲間たち│アオゲラ…田淵俊人