『全人』2011年1月号 No.746 より
2011年の1月号は、小原芳明学園長・学長の新年挨拶に続き、「俳句は新しい」と題して、高橋睦郎氏に寄稿いただきました。古典文芸、伝統芸能について深い考察を展開する詩人が、俳句の約束事になぜ季語があるのかを問い、季語こそがいのちの言葉で、俳句という最小の詩形に実は、未来に生きる者たちへ自然との向き合いかたが示されていると説く、あらたまった年にふさわしい格調ある随筆です。
また、「コスモスマイル」をテーマに開催された大学コスモス祭。各学部展と課外活動展を取材し、豊富な写真とともに報告します。学園ニュースでも、経営学部の公開講座やK-12の附属校サミットほか、学部や研究所の新しいニュースを掘り下げてお届け。好評連載「家庭力」では能楽師の観世元伯さんが、伝統芸能を受け継ぐこと、父を師匠としての修行から学んだことを語ってくださいました。
研究エッセイは、玉川大学の研究施設Future Sci Tech Labの外壁を飾る光のアートのデザインの経緯を、設計者の田中敬一教授が執筆しました。
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この生命の星、地球にあるすべての生命は季節とともにある。(略)季語は生命の指標にほかならず、世界最短の詩形の核に生命の指標があることは、その詩形に生命を与えることになる。
生命の指標という言葉がむつかしければ、いのちのことばと噛みくだいていってもいいだろう。小学生や中学生に、なぜ俳句に季語が必要なのか、と問われたら、季語はいのちのことばだから、いのちのことばを中心に置くことで俳句がいのちのある詩となるのだ、と答えたら、納得してもらえるのではないだろうか。これはなぜHAIKUにKIGOが必要なのか、と外国人に問われた場合も、同様だろう。
そう考えれば、季語は古くさい因習どころか永遠に新しい言葉だし、季語を核とする俳句は永遠に新しい詩だ。ついでにいえば私は、ひょっとしたら俳句に人類が将来生きつづけていくための鍵が匿されているのではないか、と思っている。どういうわけでまた俳句のような短い詩にそんな重要な鍵が匿されているのかと問われたら、ほかならぬその短さにこそ、と答えたい。「俳句は新しい」 高橋睦郎 p4
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地球温暖化、異常気象など地球の自然は様々な局面で今までとは違う動きを見せています。もはや自然という概念は地球上にあるのではなく、より壮大なシステムで営まれている宇宙へと広がっている時代なのかもしれません。さらに国際宇宙ステーションが現実となり、スペースコロニーが遠い夢物語でなくなりつつあります。今後は、Future Sci Tech Labで実現したような、未来や宇宙へとつながる科学技術と、アートとの新しい関係が、ますます発展していくのではないかと考えています。(略)
科学技術の進歩は、ときには自然と対峙する立場にありますが、アートという異分野と協同しあうことで、社会からの興味・関心が高まり、バランスのとれた進化の過程を歩むことができるのではないでしょうか。本施設はそのひとつのバロメーターとして機能していくと考えています。「宇宙と直結した光のアート」 田中敬一 p32
目次
- 新年ご挨拶…小原芳明
- 新春巻頭特別寄稿 俳句は新しい…高橋睦郎
- 学園ニュース
- [大学]芸術学部学生による「ANBD2010横浜展」プロモーション
- [大学]TAMAGAWA InFORUM2010開催…梶川祥世
- [大学]経営学部公開講座「みずほフィナンシャルグループの人材育成」
- [K-12]第15回 附属校サミット玉川学園で開催
- [大学]第28回全日本大学女子駅伝対校選手権大会13位
- 玉川大学 コスモス祭2010
- 学術研究所だより 8
時代を見すえた一貫教育 K-16一貫教育研究センター
- K-12 FOCUS 8
大学工学部とのコラボ・低学年生のロボット製作体験
- 子どもの本で世界をまわる 8
最高の先生は村の子どもたち〈ネパール〉…公文健太郎
- 見つめる&見つめ直す…家庭力 41
観世元伯 能楽師 観世流太鼓方
- 玉川の丘めぐり 8
創立者からのメッセージ「困難を友として」…白柳弘幸
- Book Review 77
『故郷忘じがたく候』…椿 敏幸
- 課外活動訪問 8
ダンスドリルチーム・ジュリアス=チーム全員で掴んだ全日本大会3位
- 研究エッセイ
宇宙と直結した光のアート…田中敬一
- たまがわ健康教室2010
かかりつけ医を持とう
- Career Navigation '10
仕事インタビュー〈食品 研究補助〉&イベントスケジュール
- 学外施設定期便 8
足下の世界を知る〈神奈川/箱根〉…杉本和永
- 同窓会インフォメーション
ホームカミングデーを終えて
- 学園スケジュール│玉川大学・K-12のイベントと入試に関するご案内
- 表紙の風景│扇面図屏風 おくのほそ道 木下しおり 【作】
- 教育博物館館蔵資料紹介 229│赤ちやん記念帖…菅野和郎
- TAMAGAWA HEADLINES 学園近況
- 玉川の仲間たち│オオワシ…金井秀明