『全人』2009年6月号 No.729より

2009.06.01

大学を取り巻く環境は大きく変化し、「学士力」「学士課程教育」が盛んに議論されています。早い時期から一年次教育に取り組んで成果をあげてきた玉川大学がめざす学士課程教育のあり方とは？今月号の巻頭では、本学主催の特色GPシンポジウムから、学士力に何が問われているかを考察します。
幼稚部＆1年生と、大学の入学式の様子は学園長・学長の訓辞抄録付きで報告。また、新連載として「玉川学園のユニバーサルな教育」をスタートさせ、第1回はIBクラス（インターナショナルバカロレアクラス）のMYP校認定のニュースをお伝えします。
グローバルCOE特別講義には、カリフォルニア工科大学から下條信輔先生、「家庭力」では動物行動学者の日髙敏隆先生が登場です。

2009年6月号目次

玉川大学主催の第3回特色GPシンポジウムで基調講演する川嶋太津夫・神戸大学教授

学士課程教育が注目されるようになった背景についてご説明いたします。何よりも「大学のユニバーサル化」、つまり、大学が昔のように遠い存在ではなく、誰もが入学できる場所になってきたことがあげられます。平成20年度は、18歳の若者のうち55.3パーセントが大学もしくは短期大学に進学していますし、大学・短期大学の収容力（志願者に対する入学受け入れ規模の割合）は92パーセントで、志願すればほぼどこかの大学・短期大学に入学できる状況です。（略）
次に「21世紀の知識基盤社会の到来」があげられます。これまでの「ものづくり」を基本とした社会から、人の知識や情報そのものが社会の基盤となりつつあります。以前であれば、博識であることが評価されていたのに対し、知識基盤社会では、習得した知識で何ができるかまで問われています。そうだとすれば、一方的に知識を授けるだけの大学教育では不十分なのです。

「初年次教育と学士課程教育の構築」川嶋太津夫 p4
IB（International Baccalaureate）クラスでは週1回、MYP（Middle Years Programme）の学習法を学ぶ

（玉川学園の）IBクラスは、これまで行っていた授業の内容を英語で教えるコースでもありません。MYPはカリキュラムではなく、何をどう教えて、どう理解させるかという教育方法のプログラムです。5つの「相互作用のエリア」と各教科との連携、教科どうしの連携、あるいは社会との連携を重視して、テストのための授業ではない教育を目指します。
現代社会は急速にIT化が進み、予想以上のスピードで情報が更新されて身のまわりに溢れています。必要な情報は、学校や図書館に行かなくても、自宅でコンピュータから引き出すことができます。もし、学校が生徒に情報だけを与えるところだとしたら、もはやその役割は果たせなくなるでしょう。MYPでは、膨大な情報の中から自分に必要なデータを見きわめて収集することを教え、10年生になったときにはそのスキルが備わっていることを目標としています。

「玉川学園のユニバーサルな教育」1 IBクラスMYP校に認定 p20