『全人』2009年5月号 No.728より

2009.05.01

2009年、玉川学園は創立80周年を迎えました。「全人」も、新年度号の5月号で新しい連載をいくつかスタートさせましたが、創立80周年の今からさらなる未来への教育の挑戦、今に至る学びの道程など、どれも玉川の教育の現場を生き生きとお伝えするページになりました。
巻頭は創立記念日の小原芳明理事長挨拶の抄録。新連載は、昨年グローバルCOEに採択された脳科学研究所中心のプログラムが、研究テーマ関連分野の方々を呼んで行う特別講義を載録した「脳と心の対話」。第1回目は社会心理学者の山岸俊男先生の登場です。同じく新連載には、社会の要請に応える人材育成の取り組みをレポートした「On Demand Education Report」、就職活動に必見の「Career Navigation '09」、K-12の複合メディア施設MMRCの活動を紹介する「MMRC通信」、そして玉川の教育の変遷を思い出の写真とともに綴る「学びの礎」。どうぞ毎号のご愛読をお願いいたします。
また、「玉川の先輩を訪ねて」は、去年の北京オリンピックの女子トライアスロン競技で5位入賞を果たした井出樹里選手へのインタビューです。

2009年5月号目次

北海道大学大学院の山岸俊男教授が「評判メカニズムとしての内集団ひいき行動」をテーマに特別講義

人間は利己主義の生き物であると、一般的には考えられています。これは自然界の動物すべてについても当てはまることで、自分の遺伝子をこの世に残すためには、自分の安全や利益を第一に考えて行動するのは当たり前のことです。しかし、私たち人間は不思議なことに、自分のトクにはならないのに、他人に親切にしたり協力したりといった「利他行動」をとることがあります。なぜなのでしょう？「教育によって道徳心を身につけたから」との答えも返ってきそうですが、はたしてそんな単純な理由で説明できるのでしょうか？今回は社会心理学者の立場から、人間の「心のしくみ」をひもといてみたいと思います。

玉川大学グローバルCOE特別講義「脳と心の対話」1 山岸俊男 p11
科学のセンスを磨く玉川教育について、ミツバチ研究を中心に執筆の農学部・佐々木正己教授

豊かな緑に魅せられて、玉川学園高等部に入学したのが1963（昭和38）年。木造の生物館と化学館があり、すぐに生物部に入れてもらった。部活動は活発で、玉川池での淡水真珠の養殖研究などが印象的だった。毎日、授業中も机の下で蝶の幼虫の餌かえに忙しく、窓辺からはゼフィルスや国蝶オオムラサキの姿も観察できた。
同級生に、いま日本を代表する昆虫写真家や標本商になった者がいて、そんな仲間と2～3年の春休みに沖縄、台湾に調査隊を組んで出かけた。行きに南山大と九州大の専門家のもとで情報を入手。鹿児島港から貨物船に便乗しての旅で、台湾での採集と調査は、夢のような時間であった。4月の始業式を過ぎてから帰国。それでも礼拝堂の皆の前で報告会をするという、わがままが通った時代であった。

「学びの礎」1 ──時代が変わっても大切にしたいこと佐々木正己 p18