『全人』2012年5月号 No.761より

2012.05.01

この4月、玉川学園は創立83年を迎えました。5月号の巻頭記事は創立記念日の小原芳明理事長挨拶の抄録。教育の質保証や新しいEFLプログラム、さらにはブランド力の向上などについて言及し、玉川大学・学園を取り巻く環境と、教育のめざす方向が語られています。
新年度号として新しい連載もスタートさせました。「今に生きる教育12信条」では建学の教育理念がK-12の教育の場でどのように実践されているかを探ります。「SUPLIの冒険」は、玉川大学の学生コミュニティの活動を紹介。今の学生生活がリアルに見えるデータも入れました。
また今号では、研究エッセイ「動機づけ、意思決定と脳のはたらき」で、本学の脳科学研究所所長が、研究所紹介をしつつ最新の研究を繙きます。連載「先輩を訪ねて」は第59回。タケダワイナリーの社長と栽培・醸造責任者をつとめる農学部卒業生の岸平典子さんを山形に訪ねました。

2012年5月号目次

4月2日、創立記念日・全学教職員の集いで「平成24年度にあたって」をスピーチする小原芳明理事長

これからの社会で求められるのが Global Human Capital です。卒業していく学生たちに共通して必要な力はコミュニケーション能力、つまり言語力です。そして各界のグローバル化を踏まえると、日本語力だけではなく外国語、なかでも英語力が必要となります。教育機関は学生たちが希望する分野で評価される資質が身につくように、カリキュラムを構築していかなければなりません。どういった資質が業界から求められているのかを調査することも大学の責任で、従来どおりの教育では、社会から取り残される卒業生を社会へ送り出すことになりかねません。
就職難はある意味で人的資本の課題です。低い就職率の一因は、経済の低迷のみならず、企業が求める人間と就職希望者とのミスマッチもあると言われています。つまり、人的資本としての十分な条件を備えていない人間が多すぎるということだと思います。人的資源とは働く意思のある人たちですが、人的資本には、さらに基礎基本知識、知識応用力、技術力、思考力、発想力といった資質が備わっているべきです。

「平成24年度にあたって」小原芳明 p4
農学部89年卒の岸平典子さん。ワイナリーで女性の社長兼栽培・醸造責任者は業界初

フランスでは、ワインをつくる人のことを「ヴィニュロン＝畑の人」と呼びます。ワインづくりは畑の土づくりから。その土地ならではの味を引き出すための栽培方法や醸造方法などを、醸造学校やワイン農家で徹底的に学びました。いざフランスに行っても、体力面での男性との差もあります。古い蔵では「女人禁制」のところもある。でも、本場で一からワインづくりを勉強するのは刺激的で知りたいことばかり。パリなんてほとんど行かず、日本から遊びに来た友人のほうが、詳しかったくらい（笑）。演劇部での照明スタッフの経験が、力の配分や仕事の緩急の付け方に役立ったように思います。（略）
祖父や父から受け継がれてきたワインづくりをベースに、十数名のスタッフと改善しながら毎日の作業を積み重ねていく。いまのところ、生産量や種類を増やすことは考えていません。自分の目が届く範囲で、真摯にワインと向き合いながら質のよいワインをつくり続けたい。

「玉川の先輩を訪ねて 59 岸平典子」 p32