『全人』2011年9月号 No.753より
9月号は、6月28日に89歳にて永眠されました、小原哲郎玉川学園・玉川大学名誉総長への生前のご厚誼に深謝しご通知申し上げるとともに、学園への貢献と教育提言を顧みるべく、追悼号として発行しました。小原哲郎名誉総長は1951年より玉川学園に奉職、父である小原國芳先生を支え、73年より94年まで玉川大学学長・玉川学園女子短期大学学長・玉川学園長・学校法人玉川学園理事長を務め、私立大学協会の要職も歴任して私学振興にも寄与されました。玉川学園講堂において、6月30日に前夜式を、7月1日に学園葬(告別式)を行い、名誉総長の功績を振り返りつつ、ご遺族、ご弔問くださった皆さま、そして生徒学生と教職員とで心よりの哀悼をもってお見送りをいたしました。今号では、学園葬当日をカラー写真や弔辞、説教などで振り返ります。また、過去に『全人教育』に掲載された小原哲郎名誉総長による教育への提言を抄録するほか、70年から94年までの玉川学園における教育実践について写真で紹介しています。
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先生は私学の経営者としては、まれに見る公平無私な方であり、時には必要以上と思われるほどに清廉潔白であり、私利私欲には全く無縁な方でした。これは現代において、誠に得がたい、すばらしい資質と言わねばなりません。そのように金銭面において誠に清廉潔白なお方が、役目柄とはいえ、毎年のように年の暮れの寒風吹きすさぶなか、全国の私立大学の助成金獲得のために、永田町界隈を奔走されるお姿は、誠に痛ましくも、頭の下がる思いでした。(略)
現代社会のトップリーダーとしての要件は、二〇世紀風のワンマン型ではなく、自分の周りに、いかに優れたブレーンを集め、各々の能力を、存分に発揮させるかにあるはずです。(略)先生は以前から細心の注意を払われて、多くの良きブレーンを育て、玉川学園の第二期の黄金時代を築き上げてこられました。この意味でも先生は、誠にすぐれたリーダーのお一人だったと言わなければなりません。弔辞「丘に立つ雄姿は消えず」 濵田正秀 p8
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時間がたってみると屈辱もまた人間にとって一つの師匠だという気がいたします。逆境の恩腸、これもまた神の厳しいお恵みであったのかなというふうに、昨今思えるようにもなってきたわけです。
これからの先は必ずしも栄光が保証されているわけではありません。その時その時の大きな世の中のうねりもありましょうが、一にかかって我々自身がいかなる気持ちで事に臨んで事に当っていくかということです。どうぞ腹を括っていただきたい。そして皆で気持ちを合わせ、力を合わせ、やっていくときに世の中を動かす力にそれは変わっていくんではないのかなあということをしみじみ思っているわけです。
後任の者には困難の先頭に立ち、責任の先頭に立ってそれを担ってもらうことを心から願いながら、皆さんの私に寄せてくだすった心からの友情、お力添え、仕事の面での協力、本当に心からお礼を申し上げたいというふうに思います。教育への提言「心からのお礼を」 小原哲郎 p39
目次
- 玉川学園・玉川大学 小原哲郎名誉総長逝去
- 2011年7月1日学園葬
学園から旅立たれる日
式次第・略歴
[説教]残された者たちの使命…菊池重雄
[弔辞]丘に立つ雄姿は消えず…濵田正秀
[会葬御礼の辞]静かなる勇気…小原芳明 - 全人教育─その夢と実践
玉川学園の歩みと哲郎先生
1970年~1994年 - 『全人教育』より抄録
小原哲郎・教育への提言 1973年~1994年
真の人間教育を目指して
・個性尊重の教育と全人教育 … 1973年中学部父母総会講話
・玉川のモットー、玉川っ子の精神 … 1974年度高等部入学式
・三位一体の教育 … 1976年巻頭言
・世の為、何を成し得るか … 1978年度大学・女子短期大学卒業式
・宿願の南米訪問 … 1979年7、8月の南米訪問報告
・我を見いだすこと … 1982年度大学・女子短期大学入学式
・教育の先導的役割を果たすために … 1986年度創立記念日・全学教職員の集い
・「生涯学べ」の姿勢で … 1992年度通信教育部夏期スクーリング開講式
・心からのお礼を … 1994年全学教職員会 - 小原哲郎名誉総長編纂による玉川大学出版部刊行物
- 2011年7月1日学園葬 学園から旅立たれる日
- うるわしの白百合