No.35 コブシ

礼拝堂前のコブシの開花

窓の外はまだ肌寒いが、葉を落とした木々はひっそりと春の準備をしている。そのなかでコブシはいち早く春の気配を感じ取り、葉が開く前の小枝の先端に香気のある白い花をポッとつける。サクラの季節はもう少し先である。

地方によっては「田打ち桜」とも呼ばれ、田んぼに鍬を入れる季節の目安となる。一気に真っ白い花で樹冠が覆われると、冬枯れ残る景色のそこだけがほのかに暖かくなってくる。

「コブシ」の名は、つぼみの形や熟した果実の形を握り「拳」に見立てたものだという。花弁は6枚、その花の下には小型の葉を1つつけている。果実は集合果で秋になると赤い種子が糸で吊り下がる。

雄しべ、雌しべとも多数

玉川の丘にもコブシはところどころに植えられているが、礼拝堂前のものは特に目を引く。学園創立当初に記念樹としてここに植えられたもので、風格と歴史を感じさせてくれる。大気汚染には弱いらしいが、この自然豊かな丘では今も元気に育っている。直立した主幹の樹皮は灰白色で太くどっしりとして揺るがない。創立期から聖山に上がってくるすべての「玉川っ子」を見守ってきた樹木である。

(文学部教授 石川晶生)
「全人」2005年3月号(No.680)より

コブシ(拳)

袋果の集合果が裂けて
種子が見える

モクレン科ホオノキ属
別名:ヤマアララギ、コブシハジカミ、タウチザクラ
花期:3月~4月 果期:9月~10月
各地の山林にみられる落葉高木、庭園樹、公園樹、街路樹などに植栽される花木。春の季節を告げる指標植物となる。