No.44 ビンズイ

細長い足をあげて、おいっちに、さんし

コスモス祭の賑やかな会場からはずれて玉川の丘の雑木林を歩くと、小さな、しかししっかりとした足音があちらこちらから聞こえてくる。緑色がかった背中、胸の縦筋に強烈なインパクトを持っている鳥、その音の犯人はビンズイである。

細長いスマートな足を交互に動かしながら、時折立ち止まっては後半身を上下に振る。晩秋から冬の間はほとんど平地の雑木林で生活しているので、地面や枯れ葉の色に混ざってしまうことも多く、地味な鳥と思われがちである。

しかし、夏のビンズイは高原の「お騒がせ屋さん」。主にスキー場や森林の伐採地跡など、見通しのよい高原地帯で、梢を渡りながらさえずり、上空に舞い上がりながらまたさえずる。ヒバリに似た声で鳴くので、キヒバリとも呼ばれる。夏の高原では一気に主役へと躍り出るのである。

夏と冬、これだけ変貌する鳥はそういない。あるいは冬の間は、夏のために「充電」しているのかもしれない。学園では、聖山付近のなだらかな斜面や、図書館、大学5号館(旧文学部)横の枯れ葉が敷き詰められた地面で見られる。

(農学部准教授 田淵俊人)
「全人」2005年12月号(No.689)より

ビンズイ(便追)

正面から見れば、縦しま
模様の「木枯らし紋次郎」

学名:Anthus hodgsoni
スズメ目セキレイ科
全長約15.5cmで、アジア北東部とヒマラヤ地方に分布。日本では、夏は南千島から四国までの亜高山帯の高原で繁殖し、冬になると温暖な地方に渡る。晩秋から冬は平地の雑木林などに生息し、民家の地面にやってきて植木鉢にたまった水で水浴びをすることもある。主にミミズや昆虫を食べる。