学校法人 玉川学園 Puente 2011.06 vol.01
19/24

広い大地を疾走していく流線型の白いクルマ─。 「なんてかっこいいんだろう」。5年生だった僕は、1枚のポスターにくぎづけになりました。オーストラリア大陸3000kmを縦断するソーラーカーの世界大会WSC(ワールドソーラーチャレンジ)で、玉川ドルフィンが見事優勝したときのポスターです。これがソーラーカーとの出会いでした。 車好きの家族の影響か、僕自身、小さいころから車が大好き。ソーラーカーとの出会いも必然だったのかもしれません。ポスターを見た瞬間、「絶対に、ソーラーカーを作るんだ!」と決意しました。 車が好き、ものづくりが楽しい。玉川には、そんな自分を楽しませてくれるプロジェクトがたくさんあります。高校生のときにはソーラーカー作りに挑戦しました。ソーラーカーといっても、実際は電動アシスト自転車のようなもので、足回りや駆動部分は既存のものを使い、自分たちで作るのはボディの成形くらい。それでも秋田で開催されたWSBR(ワールドソーラーバイシクルレース)で総合4位、クラス2位という成績を残すことができました。この経験で、ますます車作りへの興味が深まりました。 大学に進学してすぐに念願だったTSC P(玉川ソーラーチャレンジプロジェクト)に加わりました。最初は雑用などのお手伝いが中心で、CADの使い方や工房の設備の扱いを先輩たちから一つひとつ教わっていました。 1年生でも秋田で開催された全日本学生ソーラー&FCカーチャンピオンシップに参加させてもらえたのはうれしかったですね。この大会では、太陽電池と燃料電池を使ったハイブリッド・ソーラーカーであり、世界初のオーストラリア大陸横断に成功した車両の2号機オンディーヌ号が、燃料電池部門で7連覇、さらに全部門での総合優勝という快挙を成し遂げました。1年生だった自分はタイヤ交換くらいしかできなかったのですが、TSCPの技術力の高さを改めて実感しました。 ソーラーカーの製作は、チームが一つになってこそ成し遂げられるもの。当時、1年生は自分1人だけでした。2年生になってから、友人に声をかけてメンバーを8人集めました。あとから聞くと、皆も以前から興味を持っていたそうで、僕がきっかけをつくれてよかったと思っています。同級生のメンバーが増えて、チームの雰囲気もまとまってきたかな。 2年生になって2010年の大会では、製作のほかにドライバーという大役を担うことに。ソーラーカーのレースではスピードに加えて、少ないエネルギーでどれだけ走れるか、環境にやさしい燃費の良い走りが求められます。それには微妙なアクセル操作が重要なのですが、キャンパス内を少し走る程度の練習しかできなかったのです。「どうかぶつけずに完走できますように」と祈るような気持ちで本番を迎えました。当日は、ついスピードを出してしまい、燃料電池の水素消費量が多くなって最終ラップをバッテリだけで走ることになってしまいましたが、前年に続き優勝することができました。あとで先生にさんざん怒られましたが(笑)。 最近では、主に足回りの設計を担当しています。カーボンを使用し軽量化を図るなど、次のレースに向けて試行錯誤しているところです。バッテリや電気関係の基礎的なことはもちろん、ドライバーとしての経験も積んでいきたい。TSCPでは、自動車開発の技術や知識、環境エネルギーについて多くのことを学べるし、一緒に頑張れる仲間もいる。ここでの経験すべてが、将来の夢である自動車開発の仕事へつながっていくのだと信じています。TSCPのメンバーは学部生、大学院生を合わせて総勢30人。年齢、経験もさまざまだが、ソーラーカーへの思いは一つ。大会前には、皆で連日工房にこもって製作に取り組む。ふだんは互いに冗談も交わす気の置けない間柄だ。19vol.01

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です