学校法人 玉川学園 Puente 2011.06 vol.01
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挑戦したいのは稲や小麦です」(渡邊教授) 栄養や味では植物工場のほうが秀でていることも。植物の生育には光の波長が影響する。LEDの赤色光は葉の面積を大きくし、青色光は葉の厚みを増す。おいしい野菜を作るには赤色と青色のバランスが大切だ。 「食べる医薬品」としての役割も期待が高まる。抗酸化作用があると話題のリコピンを強化したトマトや美肌に効果があるビタミンAを14倍に高めたレタスなども栽培できるそうだ。さらに、外界と遮断できる環境に着目し、花粉症を抑えるコメや漢方薬の原料植物など、付加価値の高い作物を作れる可能性も高い。 植物工場で取れたレタスはどの葉もみずみずしく新鮮さを保っている。一口かじってみると、柔らかく苦味がなくて食べやすい。「野菜が苦手な人も、これなら大丈夫だと思いますよ」(渡邊教授)。 栽培室を出て奥に進むと、ブラックライトに照らされた闇夜のごとく幻想的な空間が広がっていた。 「ここでは、宇宙で野菜を作る研究をしています」 この宇宙農場ラボでは、疑似的な無重力状態をつくり出し、宇宙と同じ環境での野菜作りに挑戦している。 「水耕栽培の箱をくるくると回転させると、中の植物は目を回して(笑)、方向感覚がなくなります。根は重力方向に生えますが、無重力空間ではどう伸びるのか、葉や茎はうまく成長するのか……。この研究成果は将来、宇宙で農業を行うときに必ず役に立ちます」(渡邊教授) 植物工場を見学して、その可能性に期待する高校生たち。「日本のようにせまい国に合った農業ができるね」「植物工場なら、地域や国ごとの特長や好みが出せるかも」。 もちろん、クリアすべき課題もある。「最大のテーマはコストダウンです」。渡邊教授はLED照射の最適化や栽培期間を短縮して効率の向上に挑む一方、LEDを長持ちさせる技術なども研究している。未来の食料問題への挑戦は始まったばかりだ。5vol.01

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