学校法人 玉川学園 Puente 2015.06 vol.05
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Puenteたまがわ│15■ Honeybee Science Research Center │ミツバチ科学研究センター訪問記 最初のリポート現場はアボカドを栽培しているビニールハウスです。「ミツバチのことなのにどうしてアボカドなの?」と不思議そうな田中さん。アボカドは雌し雄ゆう異い熟じゅく現象を示す植物で、時間帯によって雄花、雌花が変化します。中村教授によると、自家受粉ができない植物にとっては、ミツバチの存在が非常に重要になるとのこと。「ミツバチが体毛に覆われているのは、花粉を運びやすくするためなんだよ」という中村教授の説明を真剣に聞く3人。人の手で受粉作業をするにはあまりにも小さなアボカドの花を見て吉田さんは「ミツバチって、大切な仕事をしているんだね」と感慨深げです。「じゃあ今度は、実際にミツバチを観察してみようか」という中村教授に連れられて、元気なリポーターたちは菜の花畑に向かいます。 起伏の激しいキャンパス内にある、一面が菜の花畑の丘。ここで虫とり網を渡された3人は、それぞれ見事にミツバチをつかまえました。中村教授がそのミツバチを手にとって見せると「針が出てる!」「ハチミツ色だね」「ちょっと怖い」と反応は三者三様。中村教授が、ミツバチが吸った蜜を吐き出させ、その糖度を計測すると、53.1パーセント。メロンなど甘い果物でも20パーセント以下という説明を聞いて、「花の蜜って、そんなに甘いんだ」と緒方さんも興味津々です。 最後のリポート現場は、ミツバチの巣箱です。「この巣箱一つに約1万匹のミツバチが住んでいるんだけど、女王蜂は1匹だけなんだよ」という中村教授の説明に驚く3人。巣箱から慎重に板を取り出すと、びっしりとついている蜂、蜂、蜂・・・。想像していた以上のミツバチの数に、3人の緊張感も高まります。巣から採取された蜂蜜の糖度は82.2パーセント。「巣に貯めた蜜に蜂が風を送って濃縮させたりして、やっと蜂蜜が完成するんだよ」と中村教授。感謝をしながら一口舐めた3人は「今までで一番おいしい蜂蜜」と、とても感激した様子でした。 ミツバチの研究は、その生態を解き明かしていく基礎生物学分野の研究と、畑や果樹園でどのようなことが起きるかといった応用研究の二つの側面があります。どちらか一方だけでなく、これらを両輪として研究を進めていくことが非常に重要です。たとえば「植物などの栽培時にミツバチが集まらない」といった応用研究の範囲の課題であっても、基礎研究がきちんとできていれば、その改善点を提案できるわけです。ミツバチは蜂蜜の生産だけでなく、多くの植物の受粉も担う、産業動物として非常に重要な存在です。一方でその生態に関して解明されていない部分も多く、これからの研究が非常に重要になってきます。当センターでもミツバチ生物学研究部門、ミツバチ生産物研究部門、花粉媒介機能研究部門の各部門で研究をより一層、深めていきたいと考えています。産業動物として重要なミツバチに着目▪ミツバチ科学研究センター 主任 中村 純 教授 3人に今回のリポートのまとめをしてもらいました。「ミツバチは人に迷惑をかけると思っていたけれど、すごく大切なことをしているんだと分かりました」と吉田さん。「針で刺すのでミツバチを避けていたのですが、あまり怖くなくなりました」と緒方さん。「ミツバチの存在は、人間にとってとても大切なんだと感じました」と田中さん。そんな3人の観察力に中村教授も目を見張る場面がありました。 ミツバチの研究は生物学的な側面だけでなく、植物の栽培や農作物の生産など、さまざまな分野と深く関わっており、その重要性は今後ますます増していくに違いありません。そんな研究の一端に触れることができるのもワンキャンパスならではです。彼ら3人にとっても、貴重な体験となった一日でした。研究センターで、ミツバチの生態を実際に観察ミツバチって人間の生活に欠かせない存在なんだと実感▲ ミツバチの口から蜜を採取

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