全人2017特別号
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08│全人特別号小原 玉川の指導陣は多彩ですから、村田さんの小説執筆にも大きな影響を与えたものがありますね。村田 3年生の頃に映像系の外部講師のお話を聞く授業があり、先生の「自分のやりたいことがあったら、とにかく辞めないこと」という言葉が記憶に残っています。高校から大学2年まで、書いても書いても書けなかったのですが、「小説という自分がやりたいことは辞めない。一生書いていこう」と決意するきっかけになりました。小原 小説を書いても読んでくれる人が少ないなかで、書き続けていこうと決心し、チャレンジを続ける精神は、創立者・小原國芳の理念に通じます。玉川大学での学生生活が今の執筆活動に活かされていることはうれしいですね。村田 作文の授業で、添削してくれた先生のお名前は忘れてしまいましたが、「あなたは小説を書いた方がいい」と書いて返してくださいました。誰からも「小説を書きなさい」と言われていない時にキッパリと誉めてくださり、とってもうれしくて励みになりました。小原 村田さんの才能を見抜き、背中を押す一言になったのですね。玉川大学・玉川学園はいつの時代も常にチャレンジを続けています。玉川大学のLED農園産レタス『夢菜』は量産体制を確立し市販されていますし、アワビの陸上養殖も本格的に始まっているんですよ。村田 いろいろなことにチャレンジされているのですね。大学時代は、いろいろな好奇心を満たすことで何かが見えてくるような気がします。私の場合は、小説を書くことを取り戻した時代ですし、一生書いていこうと決意した時代でもあります。将来と直接アクセスすることじゃなくても、体験はずっと記憶に残るものです。社会人になってから自分の好奇心を満たすには、時間的、金銭的な制約があって難しかったりします。過ごし方次第でいろいろな経験ができる時代だからこそ、もっと貪欲であっていいと思います。もう一度学校へ通えるとしたら、玉川大学が一番通いたい学校ですね。小原 それは光栄です。小原 今年4月に国内初の国語教育学科を開設し、豊かな国際感覚と質の高い言語力を兼ね備えた教員や真の国際人の育成に注力しています。言語力のなかでも、書くことは自分の考えがまとまる、言いたいことが表れますね。これについて書こうとパッと思い浮かび、そこからアイデアが加わり、一つの物語、一つの主張になっていく。村田さんがコンビニに題材を求めたように、題材を見つける感性を育てることも大切だと思っています。芥川賞受賞作は、なぜコンビニを題材に選んだのですか。とても関心があります。村田 じつは他のことをテーマに、書いては捨て、書いては捨てるうちに、データも全部消してしまって一から書こうとなった時、ふとコンビニを舞台にしようと瞬間に湧いてきたとしか言いようがないんです。それから異様なくらいに筆が進みました。たぶん「大学教育棟 2014」2階 ブックサロンで歓談する村田沙耶香さんと小原芳明学長小説を書くことを取り戻し、一生書き続けると決意した大学時代村田沙耶香さんと学長の対談が掲載されました。日本語の表現の美しさやおもしろさ、緻密な描写を使って書いていきたい2017年 3月特別号 掲載

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