全人2017特別号
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全人特別号│09スイッチのようなものだったのですね。自分の中でスイッチのようなものが見つかるまで、いろいろと試行錯誤をしています。小原 思い浮かんだことをメモに書き留めるのですか。村田 アイデアはメモ帳に残しますが、情景や思いなどは記憶として冷凍保存されていて、書き進めるうちにどんどん解凍されて小説の中に綴じ込んでいく感じがあります。小原 メモ帳はいつも持ち歩いているのですか。村田 はい。必ず持ち歩き、自分の中に浮かんだことをどんどん書き留めています。そのメモはかなりの量になりました。コンビニでバイトをしている時の15分間の休憩時間中もメモ帳にびっしり書いています。メモの内容は店内の様子やお客様のことではなく、コンビニとはまったく関係ないことでぶわーっと頭が働きだして浮かんだものです。小原 画家のデッサンと同じですね。たまにそこから引き出して、大きく展開させるのでしょうね。村田 そうですね、そのメモを見て、「これで小説を書いてみよう」と思ったりします。小さい頃からパッと思いついた設定や登場人物の似顔絵をノートに書き残したりするのが好きでした。ただ、どのノートが作品として動き始めるかは、子供の頃も今も、全然分からないんです。「これだな」とピンと来る時があって、その時に設定だけをいっぱい書いて、自分の中で「これなら書けるぞ」と思ったものを実際に小説にしていくのは、子供の頃から変わっていないと思います。小原 玉川での出来事がメモに残っていますか。村田 誰かをモデルにして書くタイプではないので、玉川の友だちの様子をメモに残したりしたことはありませんが、記憶にはいっぱい残っています。記憶は芋づる式で、正門を入り3本のツリーを見たら、当時の記憶がぶわーっと浮かんできました。小原 その場面がいつか小説の中に登場するといいですね。村田 そうですね。ひょっとしたらあるかもしれないです。小原 今後、小説家としてチャレンジしたいことはなんですか。村田 作品を翻訳していただける機会が増え、日本語という言葉の美しさを再認識するようになりました。展開を追うためだけの言葉ではなくて、これまで以上に日本語の表現の美しさやおもしろさ、緻密な描写を使った小説を書けたらいいなと夢見ています。小原 楽しみにしています。また母校へいらしてください。村田 はい、ありがとうございます。■ Special Talk│芥川賞作家に聞く――❷2017年4月7日、玉川大学学友会寄附講座で文学部国語教育学科と教育学部教育学科・乳幼児発達学科の1年生約450名を対象に、『思春期を乗り越えて、夢を目指すこと』と題する講演会を開催。☆詳しくはwww.tamagawa.jp/education/report/detail_12191.html

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